「先生,実を言うとですね」

 外国人刑事弁護の仕事を請け負うことが良くある(民事も結構ある)。英語ならば当職や当職の事務員で何とか対応できるのだが,それ以外の言語はできないので「通訳」を依頼する。地元大学院の留学生とか,語学教師とか,定住外国人とか色々なネットワークでお願いする。
 そういう経緯でお願いした通訳で,「先生! 実を言うとですね」というのが口癖になっている人がいる。
 「先生実を言うとですね」という枕詞で,当職は「ギクリ」として,「何を言い出すのだろう」と身構えて良からぬ事を想像するのだが,たいてい,「先生! 実を言うとですね,私の子どもは今年大学に入ったのですよ」とか「先生! 実を言うとですね,私は格差社会は当然でと思っているのですよ」とか「先生! 実を言うとですね。○○駅に降ろしてもらうとありがたいのです」とか言うそういう話ばかりなのだ。 最近は,その通訳人の「実を言うとですね」という言葉にすっかり慣れてしまった。
 たぶん当該通訳人は「実を言うと」というのを「Behold!, I tell you」くらいの言葉と思っているのかも知れない