裁判員制度:国選弁護人が目標の半数 準備に疑問 埼玉

 裁判員制度に反対する理由について,これまで色々書いてきたが,「担い手の不足」の点については,胸を張って主張できる反対理由ではなく,これまでこのブログには触れなかった。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080909k0000e040074000c.html

 来年5月に始まる裁判員制度で、埼玉県弁護士会(446人)が制度対象事件を担当する国選弁護人を募ったところ、登録を申し出た弁護士が当面の目標とする100人に対して49人にとどまっていることが分かった。県弁護士会執行部内でも、制度の是非を巡る賛否の対立があり、制度スタートまでに態勢を整えられるか疑問視する声が上がっている。

 裁判員裁判は、公判前の証拠の整理手続きに数カ月を要することや、公判が始まれば連日の開廷となることから、一つの事件に2人か、それ以上の弁護士が必要といわれている。

 事件数の推移から埼玉県内での裁判員裁判は「年間約170件」(法テラス埼玉関係者)と試算される。100人は当面の目標で、200〜150人の登録数が望ましいという。しかし、仮にこのまま登録弁護士が増えなければ、単純計算で約25件分の弁護人しかいないことになる。この場合、1人の登録弁護士が個別の民事事件などを抱えながら年間6〜7件の裁判員裁判を担当することになる。

 今回の事態は、埼玉県弁護士会が反対派が多いことに加え、賛成派も負担増となることを恐れて、様子見しているためとみられる。

 県弁護士会裁判員制度委員会の鍜治伸明副委員長は「登録弁護士の負担が大き過ぎて、制度を維持するには厳しい数字だ。これから県弁護士会の3支部も回り、個別にお願いしていく」としている。

 県弁護士会は2月の臨時総会で、裁判員制度の廃止もしくは延期を求める決議が賛成144、反対189で否決された。【飼手勇介】

 埼玉の弁護士とは年に数回お会いし,情報交換を重ねているので,上記のような事態は何となく知っていた。
 日弁連は,「緊急声明」を出して未だに推進論を維持しているのだから,その責任上,「日弁連はどの単位会も万全の準備をもって裁判員制度を担っていきます」という声明を出す必要があるだろう。単なる「意気込み・希望」ではなく,実証的データに基づいた声明を出す必要がある。
 しかし,出せないだろうね。埼玉以上に深刻な単位会は相当数あるし,大分県では「ボイコット声明」と理解できる意見を正式に提出している。そのような実態を把握しておいて−あるいは把握を怠り−声高に推進を主張する日弁連は無責任というほかなかろう。

 仄聞するところでは,日弁連幹部が,国会議員に裁判員推進に理解を求めるべく折衝しているとのこと。これも仄聞だが「裁判員守秘義務」について,検察審査会を引き合いに出して「問題なし」と宣伝しているらしい。両者の違いを隠して説明するのは,誤っている。

 ちなみに,私は,「裁判員対象国選事件」の名簿には登録していない。国選事件を受けるためには「日本司法支援センター(略称ニッセン)」と基本契約をする必要がある。しかし,ニッセンは法務省の監督に服する団体なので,そういうところとは,死んでも契約するつもりはない。同じような考えの弁護士は,全国にも数百名おり,「ノンテラス弁護士」と呼ばれている。