アトム東京法律事務所の広告

http://www.atombengo.com/

 刑事事件専門をうたうアトム東京法律事務所というところがあり,2チャンネルでも少し話題になっている。
 確かに刑事の私選を専門とする事務所というのは,あった方がよいし,その活動に敬意を表さないこともない。
 ただ,弁護士業務で刑事私選を重視している(刑事専門とはいえないが,それなりの実績はある)私としては,同事務所の広告に少しばかり疑問がある。

http://www.atombengo.com/4bengoshi/bengoshi4.html#muzai
http://blog.livedoor.jp/atomtokyo/tag/%B8%FB%CE%B1%C1%CB%BB%DF
 同事務所の広告に「勾留阻止」という題名の下にいくつかの実例が紹介されている。一つ一つの事例に「勝因は」という解説がある。
 「阻止」という言葉の定義によるが,専門家から言わせると,「勾留請求→勾留却下決定(検察準抗告棄却)」「勾留決定→勾留取消(弁護人準抗告認容)」というのが「阻止」と言う評価にふさわしいだろう。あるいは,通常の処理であれば勾留請求やむなしの事案について,弁護人の努力(検察官との交渉,駆け引き)でこれを回避したという事例も「阻止」と言っていいだろう。
 同事務所が「実績」として掲げるものは,いずれも「事件の筋」として「勾留請求,勾留延長」なしの事案ではなかろうか?
 同事務所の「保釈実績」も同様である。「実績」の名に値するのは,「保釈決定→検事準抗告棄却」とか「保釈却下決定→弁護人準抗告保釈認容」とか,「殺人被告事件で保釈決定」というような場合等であり,A4一枚の保釈請求書と身柄引受書(ガラウケ)を出して保釈をもらうのは,実績と言うほどのものではなく,「日常業務」に過ぎない。
 執行猶予・罰金も同様。ちゃらちゃらと弁護したら「実刑確実」の事案について,色んなテクニック(完黙し全面的に事実関係を争う表技,お弁当をのらりくらりと食するような裏技)で執行猶予をとったり(ごく最近いわゆるダブル執行猶予をもらった)「闘う刑事弁護」で「高裁逆転無罪」「訴因変更に追い込み(薬物「輸入罪」から「所持罪」に認定落ち)」「懲役求刑→罰金5万円(未決でチャラ)」という事件(ただし検事控訴)こそ,「実績」の名に値する。

 恐らく,同事務所の取り扱い事件の中には,上記のような「実績」の名に値する「実績」はないのではないか? もしあったとすれば,「大大実績」と言うことで,詳しい紹介があるはずだからね。私の方は,「実績」の名に値するものは年に2〜3件あるが,一般に宣伝したところで集客効果があるわけでもなく,鬼面人を驚かすがごとき宣伝をするような鉄面皮でもないから,せいぜい,業界内の刊行物(青法協通信とか,季刊刑事弁護とか)に評論を記載したり,ブログでちらっと自慢話を書く程度の話である。

 もちろん,アトム法律事務所のメンバーは,卓越した力量と血のにじむような努力で実績を獲得したのに違いないのだろうが,しかしどうなんだろうなぁ。卓越した力量と血のにじむような努力で,原付バイク試験に合格したり,英検2級に合格したら,それはまぁ,・・実績と言えば実績なんだろうけど。

(付記 同業他社に対する批判なので,実名を書いておく。この記事を書いたのは,新潟県弁護士会 弁護士高島章です。この文書と同一のものを,同事務所にメールで送ります。)