中途半端な貧乏人はさっさと自白しろ!

          
             中途半端な貧困層と刑事弁護
同業者のブログがこの問題について書いているのだが,50万円以上の現金・預金を有している被疑者(10月から実施)・被告人は国選を付けられないという。
その根拠がすごい。
http://www.asahi.com/national/update/0728/TKY200607270747.html?ref=rss
 「基準額50万円の設定について、法務省は(1)平均世帯の1カ月の必要生計費は約25万円(2)刑事事件を受任した私選弁護人の平均着手金は約25万円――としたうえで、「50万円以上あれば、私選弁護人に着手金を払ったうえでひとまず生活できる」と説明している。」
まず,弁護人の立場から考える。
確かに簡単な事件であれば,「着手金25万円・報酬なし。」は悪くない収入である。略式が見込まれる事案,公判請求されても1回結審(執行猶予)で終わりそうな事案であれば,当方のような地方都市弁護士からみると,ありがたい金額といって良い(ちなみに,私はこの種の事件については,30万円(消費税別)が標準である。依頼者の資力,依頼者や事件紹介者とのこれまでの関係−過去によい事件を紹介してくれたとか(ワラ),事件の質によっては20万円でやることもある)。しかし,否認事件で(なんちゃってであっても・本気であっても)25万円はないだろう。過去にも書いたが,本気の否認事件(世の中にはなんちゃって否認もある)では,1弁護人について着手金100万円(3人以上の私選弁護人)を請求し,払っていただく。 無罪報酬も同額である(身柄事件では,補償金が1日約1万円もらえるのでトントン)。仮に本気の否認で,25万円持ってこられたら,「申し訳ない。分割でも良いから100万円ください。でなきゃ,国選にやってもらってくれ」ということになる。

被疑者・被告人さんの立場から考える。
本当にえん罪被害を受け,裁判でも最後まで否認を続けたいというのが,依頼者の要望である。しかし,弁護士さんに着手金を払うと,1ヶ月分の生活費しか手元に残らない。被告人さんは,懲戒解雇か,無給休職−退職金は出ない可能性が強い−。外に稼ぎ手なし・・・・。否認すると,最低半年掛かり保釈も効かない。「やむなくウソの自白」→えん罪の激増。

法務省の「50万円基準」は公表されてから10日くらいたつが,まだ,日弁連会長の声明も談話も発出されてない。まさか,「歓迎」なんて声明は出さないだろうね。しかし,最近の日弁連は,何考えてるか分からないし,会長に至っては・・・(ともかく,私は,この人には投票しなかった。以下省略)。

結局,法務省日弁連!!の狙いをまとめると,「中途半端な貧乏人は,さっさと自白しろ。」ということになる。
 「貧乏人も金持ちも同じように人権がある。人は平等だ。金の有無で人権が左右されることがあってはならない」という小学生でも分かる話法務省日弁連という法律の専門家が理解できないとは情けない。