実務修習は大丈夫なのか

http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2007/03/post_038d.html

私や小倉さんが修習生のころは,まだ湯島研修で,ちゃんと2年間修習した。午前10時前に研修所に来て(JR馬橋→千代田線湯島)午後3時半には終業した。だから司法研修所は付近住民から「湯島幼稚園」と呼ばれていた。終業後は,池之端文化センターでエビを食いまくっても「あいうえお」等でお酒をいっぱい飲んでも,東京大学(歩いて10分)で石黒一憲の国際私法講義やローマ法の講義をモグリで聴講したりしても格別問題はなかった。


http://stoneblack.client.jp/


大学生協で本を買いまくったりしても誰からも文句は言われないし,当時の修習はそれくらいの余裕があった。

実務修習は,確か(記憶あやふや)検察・民裁・刑裁・弁護各々4ヶ月だったと思う。

刑裁修習など,3名の裁判官が本当に親身になって指導してくれ,当時の部長(森真樹裁判官←同名のソプラノ歌手がいるのだが同裁判官は,カウンターテナーみたいな声だった)は,「私が苦労して作った適条問題,誰か解いくれないかなぁ?」とぼやいていた(40行くらいの問題文だったので,みんな辟易し誰も解かなかった)。
「官舎訪問」というのもあって,森部長はわびしい暮らしの官舎に修習生全員を招待して鍋物を振る舞ってくれた。森部長は「私ももう少し力を付けて事務総局に行っていたら・・・・」と泣きそうな顔で述べていたので,修習生が場の空気を読んで話題を変えたのだが,話題が悪かった。「部長はカラオケとかお好きですか?」「好きなんだけど,こんな声だから誰も聴いてくれないんだよ。」と同部長はますます泣きそうな声で述べたので,官舎の居房が真っ暗な雰囲気になって,「裁判官も苦悩や挫折や悩みがあるのだなぁ」と思った(森部長は某地裁所長を務めて退官し,現在公証人をやっていてお元気なご様子)。右陪席は裁判官室が全面的に凍り付くようなしゃれを飛ばしながら「親指シフト」で判決を起案していた(当時は,裁判官も親指シフトを使っていた。B4二つ折り縦書判決文を1枚プリントアウトするのに2分かかっていた)。
当時の左陪席は,最近東京高裁(最近退官されたK部総括の左)でお会いした。喫煙室で「東京なんかに出張したって,良いことなんか一つもありませんよ」と食って掛かったら,巧みに話題を変えられた。
民裁では,新潟水俣病第2次訴訟判決(吉崎直也部長)言い渡しの前後,裁判官室で修習をしていて同判決言い渡しにも立会させてもらった(色々語りたいことがあるのだが・・・守秘義務があるので語れない)。
検察修習で,指導担当教官は,私を「思想的に偏向がある」と認めたらしく,結構意地悪をされたのだが,同僚修習生が団結し「Barl修習生が○翼だからといって差別するのはおかしいと思います」と教官と団交した。
なんだかんだあって,弁護修習でお世話になった事務所に就職して,お世話になった。
前期・後期修習はある左翼女修習生(席が私の右斜め後ろ)としょっちゅう対立したりして,余り面白い思い出はないのだが,実務修習は,今でも鮮やかな記憶がある。

現下の修習生の皆さんが,このようないつまでも記憶に残る・その後の人生に深い感銘を与えるような修習が受けられるかというと,少しく疑問がある。

「導入修習」というのが約1ヶ月あって,各実務収集先の配属期間は,2ヶ月(転勤時期や夏期休廷や年末年始が重なるともっと少ない)なので,よほど「濃いキャラクタの指導者」や「ヘビー級の事件」がないと記憶から消失するであろう。

私も弁護士業務を15年くらいやっていて,修習委員会委員となってしまった(修習委員長は,私がイソ弁でお世話になった先生←何らの事前折衝もなくサプライズで修習委員に任命された)。
当職は,特定の修習生の指導分担はないのだが,「特殊事件(外国人が依頼者の民刑事件・少年・否認・準抗告・公害環境・国家賠償)」があるとテンポラリーにトレイナーをやることになっているようなのだ。
今までテンポラリー修習で3人くらい司法修習生を指導したことがあるけど,「極めてテンションの高い事務所」だという評価が定着している。
法科大学院エクスターンシップのトレイナーもやっているけど,当事務所は特殊事件が多い特殊事務所のなので,トレイニーが始めて事務所訪問に来たころ,当職は国賠事件の証人テスト中で,いきなり,国賠事件の打ち合わせに立ち会ってもらった。それは,衝撃的な体験ではなかったのだろうか?>NSトレイニー
トレイニーに課した課題が,いきなり,「○○書士に対する懲戒請求書」の起案だったり,「事件相手方が○号証として提出した財務諸表3年分を比較すると何かしらおかしいところがあると思うので分析してレポートしてくれ(当方の依頼者は外人)」とか「間違ってアルカイーダの○○人を雇っていたことがあって,公安警察から狙われているようだ」とか言われて,現地まで赴いて,法律相談したり(その後イスラーム レストランでものすごく辛いカレーを食って,痔になってしまった・・・)。

まぁ,うちの事務所はいつもテンションが高いから(私自身メイラックスを常用している),私の事務所で修習を受ける修習生やエクスターンシップの院生さんは,神経を病まないように気をつけてほしいと思う。