公判前整理手続の準備

公判前整理手続に備えて,弁護人提出各書面を起案している。
同業者はご存じだろうが,刑事公判において,弁護人が書面を起案・提出することはほとんどない(弁論要旨くらい)。
公判前整理手続になると,結構な分量の書面を出さないといけない。「証明予定事実記載書−この表題でよいかは後述する−」「証拠開示請求書」「求釈明申請書」「合意書面作成の提案」「証拠調請求書」「検察官提出予定証拠に対する意見書」などである。
「模擬裁判」で公判前整理手続をやったのだが,整理手続における書面作成は若手のMさんに任せ,私は主として整理手続でのしきり役,「弁護人冒頭陳述」の手直し,適性証人切り崩し役であった。最終弁論は,私が書いたのだが(徹夜)・・・。対決したM検事は,模擬裁判で私に勝ったことが最高裁最高検の目にとまったのか←そんなわけない(>_<),東京地検特捜部へ栄転するらしい。私からいわせると,弁護人からの証拠排除(伝聞証言)異議への対応が全然なってないし−立証趣旨の本質が全然分かっていない−私の聴覚神経を破壊し,にいがた東響コーラスのメサイアオーディション不合格を導いた一生恨んでやりたい検事なのだ。

現在,弁護人から提出の「証明予定事実記載書」を作成しているのだが,同書面の表題をどうするべきなのか?
弁護人は原則として事実を証明する役回りでないから「証明予定事実記載書」という表題はおかしい。模擬裁判では「弁護人が公判期日において予定している主張」と題する書面を提出したのだが,なんだか長ったらしい。
「青林書院 刑事弁護の手続と技法」

刑事弁護の手続と技法

刑事弁護の手続と技法

を参考にして「予定主張記載書」という表題にすることとした。
しかし,同著書を参照にしても,この書面に何を記載したらよいのかさっぱり分からない。
共同弁護人と協議して
1 「検察官提出証明予定事実記載書」に対応する「アナザーストーリー」
2 アナザーストーリーを踏まえた弁護人の法的見解(因果関係・故意・主観的構成要件要素不存在等々)
3 「証明予定事実記載書」に対する個別的認否

という構成にすることとした。

検察官の書面に合わせて左右2段に分け右側に「主な証拠関係」で弁号証を引用しようとしたら,うまく書式設定ができなかった(岡口裁判官がマクロを作ってほしい)。無理に書式を設定しようとしたら,画面が崩壊し,インデントもぼろぼろになった上,一太郎がフリーズした。
司法研修所にいたころ,なぽみ先生の「下段に書いてね」の命令に従い,同様の書式を作ったことがあるのだが,一太郎は全く使えない。

まだ作りかけなのだが,「予定主張記載書」は民事訴訟における答弁書にかなり似た感じになる。

民事訴訟答弁書では,

「請求の趣旨に対する答弁」
「請求原因事実に対する認否」
「被告の主張」
「証拠方法」

みたいな構成で起案するのだが,やっぱりどうしても似たような感じになってしまう。

いろいろな本を読むと,「弁護人に<争点明示義務>はない。詳細な認否は好ましくない」という見解があるのだが,今回の事件は,「アナザーストーリー」をたてた上,検察官主張にできるだけ細かく認否(積極否認を含む)することにした。

この種重大事件の処理に際しては,日常業務を終えた後,誰もいなくなった事務室でひたすら記録を検討し,起案に励むわけだが,検察庁は,「中核事務官」とかいう有能なスタッフと連携して事件処理を図っているので,結構苦しい。

かなり昔,「大型ギャンブル施設建設差止(原告)」「住民運動に対する弾圧的名誉毀損訴訟(被告)」に携わったことがあった。一緒に闘った弁護士は,「こっちが苦しいときは,向こうも苦しい」と述べていた。けだしそのとおりだと思った。
この刑事事件ではこっちも苦しい思いをしているのだから,向こう(検察官)も苦しい思いをしているのだろう。