水俣病第3次訴訟(訴状の補正,割印)

 この訴状は,「訴状本体」の他に訴状付属別紙が4種類ほどある(訴状作成に当たっての事務上の便宜なのだけど,訴状本体だけでは当事者の個人情報が分からない仕組みになっていて,マスメディア対策もある)。
 で,「訴状本体」と「別紙」との間には,「割印」が必要らしい(頁数が連続していないため?)。その他,請求金額の計算ミス−8桁の電卓だと計算できない−や「」とか「」とか「」とか,「新潟市○○区が脱落している」とか,まぁ,トリヴィアルな実務的問題。

 「訴状のページごとに割印を押す」という余り意味のない実務慣行を止めさせたのは,実を言うと私である。
 1999年秋,当地新潟でも「ココ山岡集団訴訟」が提起され,当時私は,弁護団事務局長として訴状のワープロ打ち(まだペンティアムは普及しておらず,DX2とかいうプロセッサーだった),訴状提出の役割も受け持った(パソコンの腕が買われたらしい。<アクセス>による原告名簿管理など)。
 その頃は,裁判書面もB4縦書き袋とじで,原告が200人くらいいて,訴状本体と原告目録で200ページくらいの訴状になってしまった。そのうえ,被告は4社なので訴状正副本(5通)約1000ページに割印を押さないといけない。
 で,私は,書記官室に電話して,「 このたびの訴状に割印を押すのは勘弁してもらいたい。  だいたい,「割印」なんて民訴法にも民訴規則にも書いてない。 法令上の根拠もないのに特別公務員が強要行為に及ぶと「特別公務員職権濫用罪」になるのではないか?  約1000ページも割印を押したら事務員さんが腱鞘炎になる。そうすると特別公務員職権濫用致傷罪が成立する可能性もある。  職印(印鑑)が摩耗する。  「2−4」を根拠にして国賠を起こしても良いのか」と情理を尽くして説得し善処を求めた。
 書記官は,「実務上の慣行でして・・・」というので,「慣行・慣習と民訴法・民訴規則の関係ってどうなっているの?」と述べたら,「近日中に返事をします」とのことだった。「今回に限り割印は押捺しなくても結構です」との返事が,その数日後にあった。
 確か,それから2−3ヶ月して最高裁の通達みたいなものが発せられて,「ページ数が記載されていれば,主張書面の割印は不用」ということになった。だから,「割印原則不用」という成果を勝ち取ったのは,私の切なる願いが最高裁を動かしたからではないかと思う。

 高裁の刑事事件で「弁号証が700ページくらいになるので,DVDで提出したい。理由は紙資源の節約等」と述べたら,書記官から「紙で出してください」と言われた。検察庁に「これから事実取調請求予定証拠約700ページをファックスで送付したいが,よろしいか」と事務官に尋ねたら「困ります」と言われたので,−威力業務妨害でパクラれるとイヤだし−仕方がないから,郵送した。