司法修習雑感

 11月下旬から新61期の実務修習が開始された。当職は司法修習委員なので,修習生名簿と各人の身上報告書を保有している(極秘扱い)。
 当地における受け入れ人員は24名である。年齢は下は25歳,上は30代後半,性別は,男19名,女5名。出身大学(学部)・法科大学院は,結構ばらけている。
 身上報告書の記載事項は,

 氏名,生年月日,性別,本籍(都道府県),住所,電話,メールアドレス,学歴・職歴,現在の健康状態,過去の病歴,「自己の性格及び気質」趣味・嗜好,喫煙の有無,志望,家族構成等である。

 確かにセンシティブ情報満載なので「極秘扱い」すべき書類であろう。

  24名全員が「非喫煙」というのは,最近の傾向なのだろうか? 私が修習生だったころは,半分くらい「喫煙癖あり」だった。
 楽器演奏が趣味という修習生も数名いる。ダヴィドフとかベーゼンドルファーとかもっているのだろうか?(謎) 「物」を収集するのが趣味という修習生もいる。


 僕が修習生だったころ(2年修習 湯島,当時20歳台後半),実務修習の人数は7名だった。法曹三者から,それはそれは丁寧な指導を受けた。
 今度の修習生は,やはりお気の毒である。前期修習(導入修習)もなく,突然,実務修習を受ける。恐らく,修習生同士の横のつながりは希薄だろう。我々の世代では,かなり濃密な関係で,実務に就いた後も結婚式に呼んだり呼ばれたりという具合だった。その当時は,実務修習中いわゆる「お見合いパーティー」と言われるものが毎月開催され,OLさんとか女子大生とかが相手で,男の修習生(全員独身)は良い思いをした。
 前期修習中は,午前10時出勤午後3時半免業で,4時ころから上野周辺の「あいうえお」とか「金太郎寿司」でお酒を飲んだ。ウェンディーズハンバーガーや池之端文化センターの元祖エビフライも美味しかった。それにしても湯島周辺のいかがわしさは,今でも懐かしい。


http://www5c.biglobe.ne.jp/~ponkiti/sub2.htm

 いわゆる修習生バッジ。貸与制なのだが事実上誰も返還していない。裁判官に任官したのに修習生バッジを付けて夜な夜な飲み歩いたり悪さをしていた独身裁判官がいたらしい。官名詐称(軽犯罪法違反)にならないだろうか?
 
 先輩修習委員によれば,法科大学院生や最近の修習生は,「大物がいない,小粒」とのこと。「大物云々」はその定義にもよるが,確かにそういっても良いように思う。僕らが修習生だったころは,三里塚佐世保で暴れてパクられた革命家とか,民青一筋とか,暴走族のケツ持ち(少年院出身)とか,大物ヤクザの子弟とか,ノーパンしゃぶしゃぶ元大蔵官僚とか,元法務大臣とか,そういう人達が結構いた。
 tamago2先生のころ(私より20年くらい年上なのでたぶん20期後半)は,高卒後OLとか高卒後司法試験第1次試験突破とかと言う経歴の人もいたらしい。
 そういう「大物」が昨今の法曹養成制度で法曹になるチャンスが失われてしまったように思われる。

 私は上記したとおり,司法修習委員なのだが特定の修習生の受け持ちはしない(遊軍)。外国人事件とか,刑事否認事件とか,国賠事件とかでテンポラリーに修習を受け持つことになる。
 私の事務所は難しい事件が多く,テンションも高く,弁護士も気難しい(法哲学的議論を修習生に吹っかけてくるかも知れない)。私の事務所に修習に来る人は,覚悟を決めて欲しい。