お願い文書

2008年2月29日
N弁護士会
 会員の諸先生方

〒951-8061 N1551−2 (中略)西堀2階
                      弁護士 Barlkarth
Tel(025)229-XXXX
Fax(025)229-XXXX
総会会員提案賛同のお願い

拝啓 先生方には,ご繁忙のこととお喜び申し上げます。
 この文書は,N弁護士会会員全員の方へお送りします。
 来る2月29日,当会の臨時総会が開催されます。この総会において,私は,「裁判員裁判施行延期に関する決議案(会員提案)」を提出したいと考え,失礼を顧みず,諸先生にこの文書をお送りするものです。

 私は,平成4年に弁護士登録以来,多数の刑事事件に携わってきました。特に外国人を依頼者とする私選弁護に熱心に取り組み,全面無罪1件(新潟地裁→東京高裁),一部無罪1件(富山地裁),嫌疑不十分不起訴数件等,それなりに成果を上げてきた自負があります。
 外国人の依頼者が口をそろえて言うのは,「日本の刑事司法の野蛮性」です。代用監獄に20日閉じこめられ,弁護士の立会もなく訴追側による強圧的取調を長時間受け,家族とも面会できず,入浴は数日に1回,自白の撤回は許されず,陪審制度はなく死刑は存置したまま,という説明を受けると異口同音に日本の刑事司法の野蛮性を非難します。
 私見では,来年5月から実施するとされている「裁判員制度」は,野蛮な日本の刑事司法をさらに残忍にし,国民,被疑者・被告人に耐え難い負担を課するものです。その理由は,決議案と提案理由案をお読みいただければお分かりになるかと思います。
 ことに死刑の問題は重大なものです。私自身,宗教上の微妙な立場もあり,「死刑廃止」に与することはできませんが(南米等カトリック諸国が死刑廃止の先進国である反面,テキサス州等「バイブルベルト」と言われるアメリカ南部に死刑が多いところから分かるとおり,キリスト教と死刑の問題は,単純に割り切れません),−幸い私は弁護士なので,死刑弁護に携わることはあっても裁判員として「人を裁くこと」は回避できます−しかし,私の家族や友人知人に「死刑判決だけは絶対にかかわってもらいたくない」という気持ちは動きません。死刑判決に関与するということは,「人を殺すこと」とどれほどの違いがあるのでしょうか?
 少なくとも,「死刑」に関して国民的合意が得られない限り,その一点だけで,裁判員制度は導入すべきではないと思うのです。

 私の見聞するところでは,現場で刑事事件に携わってきた者(弁護人にかぎらず,裁判官,裁判所書記官,検察官,被告人の立場を経験した者)ほど,この制度の問題性を理解し,裁判員反対の立場を採ることが多いように思います。
 私自身,裁判員模擬裁判の弁護人だけでなく,現実の裁判で公判前整理手続・期日間整理手続を体験してきましたが,その体験に基づいて言えば,(整理手続を含め)裁判員裁判制度は,問題だらけであり,これを来年5月までに実施するというのは,暴挙と言うほかありません。制度への賛否を置くとして,私には,裁判員裁判を担っていく自信はありません。

 私の提案は,荒削りな点が多く,行きすぎた意見という批判もあるものと思います。しかし,愚見に全面的に賛同できない先生方でも裁判員制度の実施に疑問を感じておられる方は少なくないものと思います。
 
 会則等によれば,総会への会員提案は,総会員数(XXX名)5分の1以上(XX
名以上)の連名をもって,総会の5日前までに議案を提出することができるとされています。
 私の提案に賛同いただける先生は,同封した「議案提出書」に署名捺印いただき,当職まで返戻(メールボックスでも結構です)いただくようお願い申し上げる次第です。

 今後とも,ご指導ご鞭撻賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。