裁判員施行日決定へ

 いわゆる裁判員法の施行日を来年の5月21日をとする旨の法務省令が近々閣議決定される。
 なお,裁判員候補者の名簿調製・候補者への通知等に関する法条の施行は本年7月15日とする旨政令で定められる。
 当方の公式見解は,もちろん「遺憾」ということになるが,しかし,この暴挙は国民一般にいよいよ切実な不安感・危機感を醸成させる効果しかないもので,裁判員法廃止・延期を求める庶民の声もこれを機に大きくなるだろう(最高裁小川正持刑事局長は「具体的な日にちが決まり、国民の間に制度への『現実感』が一層高まると思う。」と述べている<産経新聞報道>)。
 鳩山も一番良いタイミングで−新潟県弁護士会の延期決議,最高裁による世論調査から程なくである−記者会見してくれたのでこの点は評価しても良い。
 明日以降のマスメディアの論調はどうなるだろうか? 感触(全国紙を含むいくつかのメディアから取材を受けている)から言えば,これまでの大政翼賛的な論調は後退し,全国紙においても制度に対する疑問を取り上げることになると予想される。ある国会議員が批判的な立場で国会質問するとの情報も入っている。4月14日にはある政治討論番組で裁判員制度が取り上げられる。同番組の報道姿勢,その他種々の情報から見て,裁判員制度に否定的な論調になると思われる。世論形成にかなり影響力のある番組なので,これも反対派にとって好材料である。

 裁判員法の施行日決定は,カタストロフの序章に過ぎない。
 本年11月には,「あなたは裁判員候補者になりました」という通知が(おそらく特別送達で)30万人もの国民にばらまかれる。裁判所に対して抗議・苦情・問い合わせの電話が殺到するのは目に見えている。この段階で裁判員制度は改めて政治問題化するだろう。現に(現段階で)後援会のメンバーから保守系議員に対し「裁判員名簿から外してくれ。裁判員にならないように手を回してほしい」という笑えない申し入れがあるそうである。不心得な弁護士がクレサラ広告のように「裁判員逃れ 指南します。」という広告を挙げるかもしれない。
 こうした事態となれば,裁判所は悲鳴を上げるしかないし,政治家も動かないといけないし,マスメディアも報道せざるを得ない。
 各地方裁判所が第1回裁判員裁判を実施するに当たり,全国の地裁から3000人から6000人の国民へ赤紙(呼出状)が発せられる。その後に訪れる悲劇は語るまでもない。犠牲者−死者の発生も予想される−は続出するであろう。

 法務大臣も政治家も私の預言に傾聴してもらいたい。今からでも遅くはないのだから。