ワークショップのこと

 先の書き込みで「ワークショップのことは詳しく書けない」と述べたが,ある程度の情報を開示することは義務だと思うので書いておく。
 出席者で記憶があるのは,

1 プロパーの著名学者 鈴木茂嗣(京都) 荒木伸治(立教)
2 弁護士 田岡直博(神山シューレ? 日弁連嘱託),名前は失念したがものすごくしゃべりまくる2弁の若手,私Barl-Karth
3 検察官 中川深雪(元新潟大学ロースクール教員 法務大臣官房)
 その他,最高裁事務総局(裁判官)が出席した様子であった。

 テーマの1つに「弁護士(会)は裁判員裁判・被疑者国選全面実施を担っていけるか」というものがあったが,結論だけ言うと,極めてディスペラートなものであった(「一応,形だけはやれる」がコンピタントな弁護をやれるかは,コントロヴァーシャルという結論)。

 学者さんの弁護士に対するイメージはものすごく高いらしい。学者さんは,日本刑法学会会員で,しかも学術大会に参加する弁護士さんしか見ていないので,このようなイメージを抱いてしまうのだ。
 しかし,弁護士(刑事弁護を扱う)の標準的イメージを,日本刑法学会に出席する弁護士とするのが間違いであるという実例が,実務家から報告された。

 刑事弁護に関する苦情処理等を扱っている実務家から,興味深い実例が報告された。上告趣意書の本文が数行程度であったりする事例等である。
 なかでも凄かったのは,「1回も接見に行かず事件処理をした弁護士さん」の話であった。なぜ1回も接見をしなかったかというと「接見禁止が付いていたから」とのことであった。

 ueyamaさんとやり取りしている論点だが,「裁判員裁判受任者名簿(法テラス)」という極めて実務的で悩ましい問題も議論された。
 「被疑者国選(H21以降)受任者名簿は作れるだろうが,裁判員裁判受任者名簿は恐らく作れないだろう」という議論になった(私の発言)。
(以下の立論は未整理で分かり難い点があると思う)
1 「強盗殺人・強盗強姦致死・殺人」等の事件が,最初からそのような罪名で勾留されるとするならば,「裁判員裁判受任者名簿」も有効だろう。しかし,このような名簿に登録する弁護士は余りいないと思われる。そんな事件を法テラス経由の国選で受けるなどという奇特な弁護士さんは,確かに余りいないと思われる。

2 かなりの事件は「死体遺棄→強盗強姦殺人」「傷害→強盗致死」というように「発展」していく。弁護人の選任は,「事件単位」でなく「人単位」というのが実務の運用だ。だから,被疑者援助事件名簿に登載をした弁護士から「俺は,裁判員事件なんてやれない。簡単な傷害・死体遺棄事件だから受任したんだ」という苦情が出てくる可能性がある。

3 苦情を申し立てた弁護士の辞任(解任)を柔軟に運用すれば,上記の問題は,それほど深刻なものではない。しかし,世の中には「身の程知らず」の弁護士さん,法テラスから支給される高額の報酬−裁判員対象事件は,比較的高い−目当ての弁護士さんがいるかも知れない。そういう弁護士さんは,裁判員裁判弁護人を受任するコンピテンシーがないにもかかわらず,事件受任を継続してしまう。これでは憲法37条3項違反の事例が続出してしまうのではないか?
 

 なんか,そういう話ばかりで,悲観的であった。