日弁連会長緊急声明への反駁

 日弁連会長 宮崎誠の緊急声明なるものへの批判・反論はすでに方々のウェブサイトで掲載されており,当職があらたに付け加える点はない。「裁判員」をキーワードで検索すればいくらでも出てくる。
 会長宮崎の見解に見るべき新しい主張は全くない。
 見るべき新しい主張がない以上,これに対する批判も,従前の主張を改めて再掲すれば足りる。

(目の良い人は,お分かりだろうが,「,」「、」が混用されている。複数の執行部関係者が「いわゆる修文」をした結果である。私も提案者代表の責任上弁護士会別館に監禁され,「修文」の手伝いをやらされた。お騒がせしてすいませんでした。藤田会長・高野次期会長−いずれも当時の肩書き−

裁判員裁判実施の延期に関する決議(新潟県弁護士会 総会決議)より抜粋。
http://www.niigata-bengo.or.jp/info/resolution/reason.shtml?416

(3) 誤判や冤罪の危険,重罰化の懸念
各地で行われている模擬裁判において,同一の事件を素材としているのに,有罪・無罪で結論が分かれたり,量刑の軽重に大きな開きが生じたりしていることが報道されている。現実の裁判員裁判でも同種の事態が発生することが懸念される。
ア 誤判・冤罪の危険性
誤判・冤罪の危険性は,職業裁判官による裁判においても古くから指摘されており,現実に誤判・冤罪は,深刻な問題である。その原因として,「自白の強要」「調書裁判」「代用監獄」「人質司法」「官僚司法」などの前近代的な刑事手続が挙げられる。これらの土壌を是正することなくして裁判員制度を導入しても,それだけでは、誤判・冤罪,被疑者・被告人に対する人権侵害が少なくなるとは思われない。
 誤判・冤罪を防止する裁判員制度を実現するためには,これらの不適正な手続運用を廃絶するしか方法がないのである。この見地から,日弁連は従前から,「証拠の全面開示」「弁護人の取り調べ立会」「権利保釈の原則化による早期釈放」とともに「人質司法打破」「代用監獄廃止」「法曹一元」に取り組んできたところであり,近時は,取調の全面的可視化を提言し,一部に実現を見ているところもある。しかし、裁判員裁判実施の日までにこれらの問題が全て改善されている可能性は少ないように思われる。

2 結論
(1) もとより司法の民主化・国民の裁判参加は,それ自体正しい理念であり,あるべき方向である。当会は,その実現のため,今後とも「あるべき司法の民主化・国民の裁判参加」について最大限の努力を継続する所存である。同時に,冤罪の根絶のため「人質司法打破」を目指し、それを達成するために「代用監獄の廃止」「取調の全面的可視化」「証拠の全面開示」「弁護人の取り調べ立会」実現させるべく,今後とも鋭意努力を継続する決意である。
(2) 他方,来年5月から実施するとされている裁判員裁判には,上述の通り,制度的欠陥を指摘せざるを得ない。これらを抜本的に是正しないまま,裁判員裁判を実施することは,国民(将来の裁判員,被告人)を犠牲としかねない。