大久保太郎先生からご著書をいただいた。

 畏敬する先輩法曹大久保太郎先生からご著書「裁判長! 話が違うじゃないですか」をいただいた。池内ひろ美さん(何度もお会いしたことがある)との共著だ。
1 訴状でそのまま使える。 
 私は,裁判員裁判制度が違憲であることを明らかにするための,法的手段がないかとずっと前から考えていた。例えば,
(1) 裁判員候補者に選ばれた者を原告とする行政訴訟(原告を裁判員候補者名簿に登載した行政処分を取り消す)や,
(2) 裁判員裁判で裁かれようとする被告人の依頼を受けて,「裁判員裁判違憲無効」との申し立てをする
などであった。
 しかしこの種の訴状や申立書は先例がなく,市井の弁護士が訴状を書こうとするとなかなか難儀なものだ。「そのうち起案しよう」と思って,ずるずる先延ばしにしてしまう。
 そういう折,大久保先生から有り難くも上記ご著書を贈呈された。同著第3部「模擬・裁判員違憲決定」は,カットアンドペーストして適当にアレンジするとそのまま,被告事件の申立書・行政訴訟の訴状に使える。

大久保先生の原典は以下のとおり(原文縦書き)

 決定 
                  被告人 ○○○○
 右の者に対する強盗殺人、死体遺棄、強盗傷害被告事件について、弁護人の申立てにより検察官の意見を聞いたうえ、当裁判所は、次のとおり決定する。
 主文
 本件について裁判員および補充裁判員を選任せず、本件を裁判官三人の合議体(当裁判所)で審判する。
 理由
(略)

 これは,弁護人用の起案として,ほぼそのままパクれる。

 申立書
                       平成21年4月8日
N地方裁判所 刑事部御中 
                  被告人 ○○○○
     
 上記被告人に対する強盗殺人,死体遺棄,強盗傷害被告事件について,弁護人は以下のとおり申し立てる。

                      弁護人 Barl-Karth
 申立の趣旨
 本件について裁判員および補充裁判員を選任せず,本件を裁判官3人の合議体(貴裁判所)で審判する。
 との決定を求める。
 理由
(略)

訴状
原告 甲野太郎
被告 国
代表者 法務大臣 裁判淫行
処分行政庁
N違法裁判所長 乙野二郎

 請求の趣旨
 処分行政庁による平成20年10月X8日付け原告を裁判員候補者名簿に登載した処分を取り消す。
 処分行政庁は,原告を裁判員候補者名簿から抹消せよ
との判決を求める。
請求の趣旨
(略)

みたいな感じである。

2 情緒的なもの
 池内ひろ美さん執筆の第1部「市民が抱える不安」も解りやすく秀逸な記事だ。
 私はかねてから裁判員制度について強く反対してきたが,その理由は,実をいうと余り理論的なものでなく「情緒的なもの」なのだ。だから,「裁判員制度違憲である」とか,「冤罪が増える」とか,「被告人の人権をないがしろにする」ということは意外にもそれほど述べていない。池内さんが「情緒」を大切にしているのと同様に・・。

1 他人様の争いごとに首を突っ込んで「裁く」のは嫌だなぁ。
2 仕事を何日も休んでお役所に行って1日1万円で堅苦しいことをさせられるのは嫌だなぁ。
3 秘密なんて守れないよぉ。
4 私には家族があり,生活があり,仕事があるのだよなぁ。ほっといてほしいなぁ。
5 どこの馬の骨か解らない連中に自分の運命を決めてほしくないよぉ。
(一言でいえば「迷惑だなぁ」)
 
 このような庶民(市民)の情緒を大事にするというのが,近代市民社会の基礎だろう。
 「お上」や「女将のイデオローグ」は,「汝人民よ それは 本当の 民主主義でも 市民社会でもない 汝は 統治主体として 真の民主主義を 実現すべし(佐藤・四宮・鯰越)」とかお節介な話だなぁ。