統一協会(統一教会)へのがさ入れ

 弁護士登録して一番最初に入った弁護団は,統一協会相手の「青春を返せ訴訟」と「新潟水俣病第二次訴訟」であった。

 「青春を返せ訴訟」では新潟合同法律事務所の同期の弁護士と一緒に「統一協会の責任根拠を709条で構成するか,715条で構成するか」,ずいぶんと議論した。「新潟水俣病第1次訴訟では,端的に昭和電工に対して709条責任を認めているのだから,そういう理論構成で行こう」というような話になった。今だから言ってもいいと思うが,この裁判(裁定合議)を担当した裁判官の一人は,熱心な福音派のクリスチャンで私の尋問(「統一協会は,特別伝道集会で偉い先生を呼んだり,駅前でトラクトを配ったりしないのですか」(証人 「トラクトって何ですか?」というような問答で笑いをかみ殺していたという)。
 統一協会は,悪いことばかりして,若者の青春を奪ったり,中高年のご婦人から多額の金を巻き上げたりしているのに,大手マスメディアは,ほとんどこの問題を取り上げなかった。捜査当局も宗教問題に介入するのを憚っていた様子だった。
 3ヶ月くらい前,某所で「全国霊感商法被害対策弁護団集会」があり,そこには,数人の捜査関係者が出席していたので,「近いうちに刑事立件するという話は,本当だろう」と思った。
 ここ数日間,あのNHKでさえ,統一協会を名指しして,かなりの時間を使って,統一教会の悪行を報道している。今さらながらうれしい話だ。

 10年くらい前,統一協会のアジト(信徒会が経営しているとされているビデオセンター)に証拠保全を掛けたことがある。
 証拠保全の10分前に執行官が予告文書を送達し,30名以上の弁護士・説明要員がアジトにガサ入れした。
 ビデオの棚に,「マザーテレサ」とか「塩狩峠」とか「人生明るく前向きに」とか「ビリーグラハム特伝集会」とか証拠価値のないビデオがあった。
 証拠保全に立ち会った統一協会の専従者は「ビデオはこれだけです」と裁判官に述べた。その発言の際,視線は下の方を向け,苦しそうな表情だったし「何でビデオはこれだけ」なんてわざわざ言うのだろうと思い,当職は,「これは嘘だ! 何か,重要なビデオを隠匿しているに違いない」と2秒間くらいで直感した。
 それで当職は,別の部屋を探索したところ祭壇(テーブルを白い布で覆っている)の下に段ボールがあり,そこに数本のいかがわしいビデオテープがあることを発見した。裁判官を呼び,段ボールの中身を点検したら,「第2SKマニュアルのポイント」というビデオテープがあった。弁護団長役の中村周而弁護士は,「SKというのは,信者献金の略称です。信者から献金を引き出すためのマニュアルビデオに間違いありません」と裁判官に上申したら,裁判官は,「このビデオは重要なものと思料されるので,裁判所が領置し,後刻裁判所内でビデオを検証する」と宣言し,持ち帰った。
 後日,裁判所でそのビデオを検証したのだが,関係者から「このビデオで学習すれば,俺でもすぐに霊能者になれるよ」との発言があった。

 この証拠保全を執行した裁判官は佐久間健吉さんであり,現在は,法務大臣官房審議官(訟務検事)として,水俣病事件の国筆頭代理人をやっている。どうも同氏とは,因縁が切れない。
 佐久間さんは,下記の事件でもお世話になった。
http://www.jca.apc.org/cpr/nl11/takasima.html

 佐久間さんは,「新潟で入りいろと勉強させていただきました」との言葉を残して,どこかに栄転されたとのことだった。