区分審理(裁判員)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100215-OYT1T01493.htm
 裁判員制度は欠陥だらけなのだが,なかでも「区分審理」は悪制度の最たるもので,「区分審理はできるだけ避ける」というのが最高裁の意向だったように思う(ちょっと典拠は示せない)。
 区分審理をやるのだったら,(事件にもよるが),2個の判決をもらった方が,被告人にお得な場合もあるし,裁判所も検察庁も弁護人も悩んだのじゃないかしら(最近は,「判決2個は刑の執行で被告人に不利益」という批判もなされている)。
 裁判所の「区分審理決定(裁判員法71条)」の経緯は,報道されてないが,検察官による請求によるものではないだろうか?

71条(一部)
検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を一又は二以上の被告事件ごとに区分し、この区分した一又は二以上の被告事件ごとに、順次、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができる。
「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

 検察庁の思惑としては,「一連の常習的犯行(情状悪し)」という点を主張立証したいのだが,全く別の裁判体で審理・判決となると,この点が難しくなる(余罪立証に弁護人が抵抗する)。さりとて,全部を1個の裁判員法廷で裁くのは,裁判員への負担が大きい。それじゃぁ,区分審理だ! という感じだろう。

 このたびの区分審理決定は,典型ケースではない(対象事件複数を別々の裁判員法廷で裁き,「有罪宣告」をしたうえで,アンカーの裁判員法廷が量刑(及び継続事件の有罪無罪)を決めるのが,区分審理の典型である)。本件はそのような事例でなく,非対象事件について,職業裁判官のみで「有罪宣告判決」をして,裁判員で対象事件と「有罪宣告済」の非対象事件を訴訟上併合して,実体判決を1個出す。恐らく(ちょっと調べる時間がない)公判手続の更新は不可欠と思われる。

(区分審理の解説は,畏友ビートニクス先生のブログ
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2009/07/post-d0d3.html
 公判手続の更新というのは,正式にやろうとすれば,職業裁判官で裁かれた事件について,起訴状を再度朗読して,証人尋問調書・検面・員面も朗読しなければならず,結構大変(かつ単調)だ。「有罪」は動かないとしても,情状事実について裁判員が心証をとるには,正式な公判手続更新が不可欠なわけで,裁判所が実際の法廷で,どのような手続を実施するかは,興味深いところである。

 余談 このたびの決定は,私の受持事件(新潟地裁)の事例を参考にしたと思われる。「余罪立証でもめるから,2個の判決は困る」という点など・・・。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009103000380&rel=j&g=soc


PS 当会の齋藤裕弁護士がブログとツイッターを始めたらしい。私とは微妙な関係です(ワ)。
http://blogs.yahoo.co.jp/yutakasaito867
2ちゃんねる実質管理人から,お金を取ったらしい。
http://www.niigatagoudou-lo.jp/?p=352