勾留理由開示公判

 この2年の間,勾留理由開示請求をしていなかったので(直近の同請求はロシア人手榴弾男),少し腕が鈍ってしまった。これは,新潟県内における公安事件として極めて貴重な記録なので,弁護人の意見をこのブログに掲載しておく(匿名化等,若干の修正あり)。関係記録の整理が済み次第,適宜補訂する予定。
 この事件のおかげで,テ・デウム(ブルックナー)の最終練習にいけない等々,個人的にも重大な迷惑を被ったので,そのうち国賠。
 一応,事前に原稿を作ったのだが,アド・リビウムが結構ある。2-3日後に調書が仕上がるので,その際は,ナマ意見を掲載します。

障沒?i高島)章弁護人の意見(メモ)
 本件勾留事実の冒頭に,「被疑者は革命的共産主義者同盟全国委員会の活動家であるが」との記載がある。
 この冒頭の記載が,本事件の本質を示している。
 本件は,被疑者が,世間で言う極左過激派であり,安心安全な社会の敵であり,危険分子であるという予断偏見に基づいて行われたでっち上げという他ない。新自由主義と金融恐慌,格差社会の拡大と,「生きさせろ」と言う学生・青年の声,本日の鳩山政権の崩壊という情勢にあって,権力側は,現体制の維持に必死である。そして,被疑者の配布した「国鉄闘争の火を消すな」というビラ(政治的表現行為)は現体制にとって,目障りであり,驚異であった。だから,被疑者を見せしめ的に現行犯逮捕し,検察権力は10日間の勾留を請求したのである。
 
 被疑者が,世間で言う過激派メンバーと認定されなかったら,このような事件は,現場に臨場した地域課警察官の取りなしや説諭程度で一件落着であったはずである。
 制服警察官は,「このようなトラブルで現行犯逮捕などあり得ない」という口ぶりであったが,後に臨場した私服警官の命令により逮捕に至った。

 被疑者は,西警察署長の命令で,1日6時間近くの強圧的取り調べを受けているが,完全黙秘をつらぬいている。
 取調において,MMMという捜査官は,被疑者に対して「偶発的な事故で,かっとなってやったと調書に記載して署名捺印すればすぐ終わるのだが・・・。」などと述べ,泣き落としにかかっている。これは,「自白すれば軽い処分で済む」という利益誘導であり,許されない。
 被疑者に対する取調など,無駄である。捜査当局は,このような無益で違法な取調を止めるべきである。

 取調に関連して,裁判官にも一言申し上げたい。
 当弁護人自身が,勾留請求前にAAA裁判官と面談したところ,「在宅事件になった場合,被疑者は任意出頭して取調に応ずるのか」と質問された。この問に対しては,「学生みたいな議論はしたくないが,勾留は取調のためにあるのではない。」と答えた。
 もし,この答えが,「罪証隠滅の判断」に影響があったとすれば大変残念である。学生みたいなことを言いたくないが,裁判官は,平野龍一先生の教科書をよく読んで欲しい。

 被疑者には罪証隠滅のおそれがあるという。これも誤った判断である。本件について公判請求があれば,被疑者はいつでも裁判所に出頭する。被疑者は,水俣病3次訴訟,中国人強制連行訴訟,裁判員廃止運動など,各種運動の中心メンバーであり,呼ばれなくても裁判所に押しかけているのである。まして裁判所から呼ばれたら喜んで出頭することは間違いない。

 その他,準抗告申立書に記載したとおり,本件は,勾留事実自体が犯罪を構成せず,罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもないし,勾留の必要性も認められないものであり,本件勾留は即刻取り消されるべきである。
 なお,本件について勾留延長がなされた場合,準抗告を申し立てることを,この場で予告しておく。