銃刀法の事件(公判)

 本日,銃刀法事件(黙秘)の公判があった。
 午前中,家裁で調停事件があり,その後,事務所で最終的記録検討をして,公判に臨んだ。どうということのない事件なのに,傍聴席にたくさん傍聴人がいた。よく見ると,検察事務官(首に何かネームプレート様のものをぶら下げている)と修習生数名みたいだ。裁判官席の左下にも3人くらい修習生がいる。
 検察官は,包丁を何本も携行して法廷に臨場した。物(ブツ)として取調を請求するためなのだが,検察官の行為は,少なくとも銃刀法違反の構成要件に該当するし,もしかすると,凶器準備集合罪の構成要件に該当する。なぜ検察官のかかる行為が犯罪を構成しないのか疑問に思った。法廷内で包丁をちらつかせる検察官を現行犯逮捕しようかと思ったがやめておいた。
 当弁護人は,「物の取調に異議なし」と意見を述べたが,裁判官は,証拠採用しなかった。
 その後,裁判員用評議室(?)で進行協議をした。修習生が金魚の糞のように付いてきて,うざかったが,好みのタイプの女性修習生もいたので我慢した。
 最近新設されたN地裁刑事棟だが
1 法廷内の明かりが暗いので弁護人席にデスクライトを付けてもらいたい。
2 書記官室内(裁判官室の直近)に喫煙コーナーがあったが,あれは如何なものかと思う。
3 今度「拘束室」と見学させてもらおうと思う。自分がいつ入るかも解らないので・・・。

日本刑法学会第87回大会(学会創設60年記念大会)

 上記の件について,レジュメをもらった。記念大会なので,ロクシンとか偉い学者を呼ぶらしい。私も一時期ロクシンの教科書を読んだことがあるので,実物の話を聞いてみたい。それにしてもロクシンによる目的的行為論批判は,相変わらずのものだ。レジュメ(16ページの印刷物をレジュメと呼んでよいかどうかは疑わしい)のほとんどは,目的的行為論批判と近時のヤコブス批判に費やされている。
 「目的的行為論」によって,刑法解釈学を全部整合的に説明できない(一貫しようとすると不都合な結論に至る)というのは,それは,知っている。色んな欠点はあるからね。しかし,だからといって,行為の存在構造を分断して良いのだろうか? いつもそのように思っている。学問上の整合的な認識(体系構成)に都合がよいからといって,哲学的・科学的真理(行為は目的性をもっている・行為の主観的要素-目的性-と客観的要素-身体の動静-とを切り離すことは正しくない)を脇に置くというのは,やっぱりおかしい。
 私は,司法試験受験生時代,主に団藤と平野の教科書を読んでいた。体系は団藤・実質は平野(結果無価値 偶然防衛は未遂)といういいとこ取りだ。福田平先生は読まなかった。だから,受験生時代は,目的的行為論を採用する余地はなかった。
 しかし,司法試験合格後,余裕ができた後に色んな本を読んだり,実務上の問題を考えたりすると,やっぱり目的的行為論が正しいのじゃないか,目的的行為論は,人間とか行為とか不法というものを正しくとらえているのじゃないか,行為の主観面と客観面を切り離すというのは,ものすごくアートな考え方じゃないのかと思うようになった。
(以下続く)
 外国人の学者が3人来るが,みんなドイツ人だ。渥美東洋先生 また怒り狂うのだろうか?

情けない検事

 最近の法律家の学力低下・実務能力低下は,聞知しているところであるが,これほどのひどい法律家がいるとは思わなかった。
 もちろん50期後半−60期代の大部分は少なくともコンピタントであり,エクセレントな人も多い。司法修習委員として,これらの期の人を何人か指導してきた実感である。
 ある刑事私選事件でのことである。いろいろな事情があって,いわゆる罪状認否に際しては,黙秘,甲号証(書証)は全部不同意,物の取調は異議なし,乙号証は同意(取調に異議なし,任意性を争わない)という方針でいて,この方針については,数日前に公判立会検事にも伝えておいた。なぜこのような方針を立てたかは,以心伝心で伝わっているはずだと思っていた。
 先ほど当該検事(元検事ではなく,元現役の検事である??謎)と電話で話をしたのだが,60期代では,とんでもなく基礎学力に劣る人がいるのだと実感した。

 以下,会話の要旨。

P 乙号証は,全部同意ということで有り難うございました。
B どういたしまして(任意性で争うネタもないからね 括弧内は独り言 以下同様)
P 黙秘の予定ということですが,黙秘の趣旨は何ですか?
B (はぁ?)「憲法で保障された黙秘権の行使です」
P 黙秘権が憲法で保障されているのはそのとおりですが,趣旨というか黙秘権を行使する理由を教えてもらえませんか? 
B 理由を説明する必要があるんですか!? (切れかかってきた)
P 争点を明示してもらわないと・・・。訴訟の円滑な進行に協力していただければと思いまして・・・。
B (説教口調となる)「手続の円滑な進行には協力している。だから,こうして弁護方針や検察官提出証拠について意見を内示しているではないか? 弁護人は,手続進行で協力する義務はあるが,実体形成過程において被告人・弁護人に協力義務があるなんて話は初めて聞いたね。いいですか,訴訟というのは,法廷という場で対立当事者が厳しく争っていき,実体を形成していくものでしょう。」(あれれ,この検事さんは,エルヴィルクングスハンドルング-与効的-とベヴィルクングスハンドルング-取効的-の区別つもつかないんだ。少しは平野の基礎理論でも嫁! と思った。)

(何で俺が「刑事訴訟法の基礎理論」を検察官に説示しないといけないのだ! 最近の若い者は平野や団藤で基礎理論の勉強をしてないんだろうか? しょうがねーな)  


P 甲号証(書証)は,全部不同意ということですが,どういう趣旨ですか?
B 人証で立証してほしいということです(憲法37条2項の講釈をしようと思ったがやめた)。そういう趣旨ですよ。それ以上説明する義務も必要もないと思いますよ。
P 今後とも不同意の意見なんですか?
B 訴訟というのはダイナミック・動態的なものでしょう(団藤先生読んでないのか?)。被告人と打ち合わせをしながら考えていくことになる。それ以上はいえませんね。

P 公訴事実に対する弁護人の意見の予定は?
B 「被告人が黙秘しているので,弁護人も公訴事実に対する意見は言えない」ということになります。
P 意見を言えないのですか?
B だから「意見は言えない」という意見です。
P 罪状認否で黙秘,弁護人の意見は留保では,手続はストップしてしまうような気がします。
B そんなことはないでしょう(そもそもいわゆる「罪状認否」なるものは,刑訴法に定められていない)(早く済ませたいのなら,実況見分調書を作成した警察官を在廷証人にしておけばよい)。

B こういうことを聞くのは失礼だが,あなたは,公判立会(りっかい)の経験はどれくらいあるのですか? (否認事件や黙秘事件なんてやったことないだろ)
P 答える義務はない。

B 失礼だが何期?
P 60期です。
B (あぁぁ。噂は本当なんだ)
B 大変失礼なことをも聞くけど,刑訴法の教科書は,何を読んだのですか?
P 答える義務はないでしょう。
B 義務があるかどうかの問題じゃなくて,あなたの学力の問題なんですよ。

 「苦情を言いたいから,次席に電話をつないでほしい」といったら「改めてかけ直してほしい」とのことだった。