刑事弁護のこと

たいていの刑事事件は、2回で終わる。1回目で検察立証(要するに捜査書類を裁判所に提出する)、弁護側立証として情状証人(被告人の身内が多い)・被告人質問、論告弁論が第1回。2週間くらいおいて判決。

そういう事件の国選は、8万5000円くらいなので、まぁ、文句は言いつつもそつなくこなすというのが、普通の弁護士である。

うちの事務所は、そういう簡単な事件は殆どこない。ほぼ100パーセント私選で、無罪主張をしたり、情状事件であっても「お涙ちょうだい、お代官様おねげぇしますだ」はほとんどない。弁護側立証が数期日に渡ったり、検事とケンカしたりと言う事件が殆どだ。

無罪判決をとったこともあるし、それはそれでうれしいけど、労力は大変なものだ。

この間、「まず無罪だろう」と思っていた事件で、有罪判決をもらった。被告人も悔しがっていたが、諸般の事情(特に未決勾留)で控訴を断念した。

当地の弁護士でもかつては、刑事弁護に熱心に取り組んでいた闘志が数名いた。しかし、年齢を重ねると次第に「面倒な私選弁護」から手を引いていく。その気持ちは、よく分かる。何とか私の後継者を作りたいと思っているのだが・・・。労ばかり多く益(経済的にも充足感・達成感でも)少なき仕事を最近の若い者はやりたがらない。

先にふれた「まず無罪だろう」という事件で見込みがはずれ、私も「私選の難しい事件からは、もう足を洗おう。もっと楽に稼げる事件はいっぱいある」と思ってしまった。

はっきり言う。高名な刑事訴訟法学者が言ったとおり日本の刑事裁判はかなりDisperatoな状態である。