「万景峰(マンギョンボン)号」のこと

Barl-Karth2005-05-27

これから私が書くことは,かなり刺激的だし,批判も覚悟している。
新潟に定期的に入港する「万景峰(マンギョンボン)号」のことである。

マンギョンボン号は,(遅くとも)私が小学生くらいのころから,新潟西港に出入りしていた。在日朝鮮人のみならず,日本人も入港を歓迎していた。拉致問題が表面化する前までは,新潟市北朝鮮とは親善関係にあった。
北朝鮮歌舞団来る!(公演 県民会館大ホール)」とローカルCMで宣伝していた。おそらく県や市も後援していたと思われる。
そのような関係にあるためか,新潟市には,在日朝鮮・韓国人が比較的多く居住している。他の地方に比べれば,民族差別は少ない方である。「パク君」・「イー君」らとチームを組んでサッカーをやったりしていた。
横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されたという情報が公式に確認された後,このような親善関係は断絶し,マンギョンボン号入港のたびに「帰れコール」が起きるようになった。しかし,そのような「帰れコール」に積極的・主体的に参加している市民はどれくらいいるのだろうか? おそらく,あまり多くないだろうと思う。

私は,職業柄「右翼」と呼ばれている人とも付き合っている。地元の右翼に「マンギョンボン号へ抗議活動してきた?」と聞いてみたところ,「行く事は行って来た」と言う。
「で,何してきたの」,と聞くと「一応付き合いもあるから街宣車で乗りつけたけど,記念写真を取って帰ってきただけだよ」と言う。シュプレヒコールはしなかったそうだ。「右翼と呼ばれている人」は「右翼」であると同時に新潟市民である。私と同年代以上の人だから,多分,かつての「親善関係」を,私以上に良く知っているのであろう。
拉致問題は,客観的証拠がたくさんあるし(第一,金正日が自白している),決して許されないことだと思う。また,過去の「在日朝鮮人帰国運動」も間違っていたと思う。しかし,これらの問題とマンギョンボン号入港問題とを絡ませるのは,短絡的だし,良く考えるとさほどの論理的必然性もないし,拉致問題解決のために適切・有効な手段であるとも思われない。
私は,仕事柄在日朝鮮人一世・二世とも付き合いがある(中小自営業者等)。在日一世(80過ぎだがお元気で,着手金代わりに時々朝鮮にんじん茶を頂いている)は「私は金日成(彼は「きんにっせい」と発音した)も金正日(きんしょうにち)も決して支持していない。しかし,マンギョンボン号来航阻止運動だけは支持できない」と述べていた。

些細な法令違反で摘発や入港阻止しようとするやり方は,姑息な手口であり,当局者は「法匪」といわれても仕方がないだろう。踏み切り前で些細な一時不停止を摘発しようとする警察官と大して違わないと思う。もちろん,拉致問題の解決は,国家的課題であろうが,このようなやり方が,本当に有効なのだろうか?
県知事も市長もセンスがないと思う。声の大きい人たちの方にばかり目を向けているようにしか思えない。本件問題に関して(のみ)言えば,私は,小泉首相を支持せざるを得ない−でも靖国参拝は止めてほしい−。

このような当局者や「反対運動」に眉をひそめている市民も少なくないと思う。しかし,おおっぴらに声を上げられない(朝鮮総連もこの問題では息を潜めているようだ)空気がある。