ひねくれ者の受験生活

ひねくれ受験生活
アクセスログを見ると結構法学部の学生さんがアクセスしてくれている。法哲学に興味をお持ちの方も多いご様子。だから私の受験生活のことも少し書いてみる。
1 司法試験第二次試験のいわゆる短答式試験に合格したから通知する(司法試験管理委員会
と言うのが,合格通知(葉書である)。
これに受かるのは簡単だ。受験生の50パーセント以上の人が正解している問題を全部正解すると,確実に上位30人くらいの高順位で合格する。ね? 簡単な話でしょ? テクニックや精神論的なことはあとで書きます。

2 論文試験
まともな教科書は,読むことは読んだが,あまり面白くなかった。憲法佐藤幸二造本が悪いため,2−3回読むと,本が崩壊する)。(小林直樹が「基本書」とされていたが,言っていることがほとんどアジ演説みたいで理解できない上,2冊本はきつかった。清宮四郎は,基礎理論が怪しいのでやめた)。

民法我妻栄民法教室・民法講義),四宮和夫,ただし物権変動論のみは,船橋純一。このあたりは,オーソドックスなのだが,何故か東北大学のケルゼニアン系統に傾倒してしまい,法治主義概念は柳瀬良幹(エッセイを耽読した。一時的に文体がおかしくなってしまった)の「行政法教科書」,憲法の基礎理論(法哲学との接点あたり)は菅野喜八郎,山下威・黒田覚(この人は京大)あたりの著書・論文を読みあさった。あとは,エア,ヘア,ライヘンバッハ(もちろん碧海大先生,井上茂達夫ではない,大先生の方。
我妻先生は,「土地が減価償却」するかのごとき説を唱えたり,債権の二重譲渡の重要論点が(まぁ,こんなもんじゃないか的なノリ)で3行しか書いてなかったり,連帯債務の一部免除が理解不能だったので,この点は,論文で補充した。
実証主義ばかりやっていると不味いので,ホセ・ヨンパルト(上智の生協で立ち読みをしていたら,某枢機卿が隣で神学書を立ち読みしていた),三島俊臣,加藤新平←何故かキリスト教神学に異常に詳しい,
国際私法は折茂豊(この人の文体は写ルンです。「少なからず疑わしい」とか)。←この人は,あまりケルゼンとは関係ない。
法哲学の先生が,何故かスカンジナビアリアリズムばっかりやっていて(一応オースチンやケルゼンもやったけど)佐藤節子という人の本も読んだ。
刑法は荘子邦雄(分厚い方 この人はヘーゲル系だが)団藤,平野,内田文昭←おかげで,総論の体系がわやくちゃになり,結果無価値(偶然防衛未遂説,主観的違法要素極限限定説),法定的符合説(どうせ観念的競合だから,何人殺しても一緒というのだけは納得できなかったので,ここだけは,やむなく大塚説),行為は「身体の動静」,人格形成責任論といいとこ取りばかりした。
条文は読まない,判例集も読まない。暗記物は苦手。1時間教科書を読んだりノートを作ると40分散歩に出かけてゲーセンやパチンコ屋で遊んだりして,頭を整理する。
おかげさまで,「口述試験」を2回受ける羽目になった。ゼミの勉強会では「論文問題はちゃんと書いているのだが,答案批評の議論になると,言っていることが理解できない」と酷評されていたので,しょうがない。
合格の前後ころ,横山美夏さんの助手採用論文を読んだが(謹呈してくれと要求した)難しすぎた。「今,論文試験の講師をやっていて,こういうネタの物権変動論で問題だそうと思う」と相談したら,「まぁ,司法試験レベルでは,そういう考えなんだろうけど」とか言われてしまった。
(続く)