検察による書類偽造

書類偽造 検察事務官を減給 起訴猶予処分に

 交通事故の捜査段階で被害者から実際に事情を聴かず、うその書類を作成していたとして、新潟地検は十三日、男性検察事務官(五一)を減給百分の十、三カ月の懲戒処分にしたと発表した。虚偽公文書作成・行使については「事実を認めており、隠そうともしていない」などを理由に起訴猶予処分にした。

 新潟地検によると、事務官は長岡区検に在籍していた平成十四年十二月十一日、担当していた交通事故の捜査段階で、被害者から事故状況やけがの程度を直接聴かないまま、警察の調書や加害者の話をもとに状況を推測して、うその書類を作った。うその書類は、ほかの証拠資料などと一緒に長岡簡裁へ提出していた。調べに対し事務官は「年末の事件処理に追われ、忙しかった」などと話しているという。

 十五年十二月中旬、事件の確定記録の写しを見た被害者がうその書類に気付き、地検長岡支部に苦情を申し立てた。

 中井国緒次席検事は「公訴権を扱う検察事務官がこのような行為に及び、国民に深くおわびしたい」とコメントした。

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平成17年(ワ) 第XX号 国家賠償請求事件

原 告 T
被 告 国
平成17年9月29日
準備書面

新潟地方裁判所長岡支部 御中
原告訴訟代理人 弁護士 XXXXXX
同 弁護士 Barl-karth

第1 原告の訴状における主張について
1 原告は,訴状において要旨「捜査機関は適正な捜査を行い,被害者の処罰感情を斟酌してその処分を決する義務があり,これは単なる国家の義務(責務)であるのみならず,犯罪被害者の権利であるというべきである」と主張した(以下,この主張を便宜上「適正処罰請求権」と言う)。
 以下,この点について,原告の所論を解説する。
判例・学説・日弁連の見解・各種国際条約を一瞥してみたが,「適正処罰請求権」を明確な「権利」として認めるものは,残念ながら存在しなかった。
 しかしながら,近年における各種犯罪被害者保護立法の策定,各種犯罪被害者関係の団体の声明,各種の条約や国連宣言(典型は「犯罪及び権力濫用の被害者のための正義に関する司法の基本原則宣言」「被害者のための正義に関するハンドブック」),刑事司法における被害者の司法過程への積極的参加の提言(私人訴追,附帯私訴等)の流れから見て,「適正処罰請求権」は,時代の流れに即した解釈であり,いささかプログレッシブな考えではあるものの,行き過ぎた考えではないと考える。日弁連が,「適正処罰請求権」の見解に至らなかったのは,「刑事弁護センター委員会」その他の頑迷な勢力の反対にあったためとも思われる。
3 「適正処罰請求権」を基礎付ける現行法上の制度としては,「告訴権」・「公判における意見陳述権」・「検察審査会制度」等があげられる。これらは,その制度趣旨の基礎に,「適正処罰請求権」という考え方があることは自明である。
4 刑罰の本質については,様々な学説があるが,古典的な学説は「その本質は応報であり,その機能は一般予防と特別予防とにある」というものである(団藤外)。
 しかしながら,このような「近代啓蒙主義・理性主義」を背景とする刑法の基礎理論は,現代社会にあっては,既に限界に来ていると思われる。しばしば,メディアで報道される残虐な犯罪の犠牲者遺族の声が,これを物語る。刑罰の本質・機能は,「応報(カント)」などという「哲学的・理想主義的」なものではないし,「予防」などという「機能主義的」なものでもない。刑罰という「制度」の「淵源」を顧みれば,やはり,被害者(犠牲者)の「復讐心の満足」(逆に言えば,私的復讐の代替手段)にこそ,その本質が求められるべきものなのである。
5 「適正処罰請求権」の法律上の根拠は,憲法13条にあると解する。
6 最高裁判所「平成17年04月21日 第一小法廷判決 平成16年(受)第2030号 損害賠償請求事件」における泉〓治裁判長の反対意見も十分傾聴せらるべきである。同裁判官は,以下のように説示している。
 私は,被上告人に対し上告人への20万円の慰謝料の支払を命じた1審判決の判断が正しいと考えるものであり,これを破棄した原審の判断を是認することができない。その理由は,次のとおりである。
1 原審の認定によれば,西宮署の担当警察官は,本件犯罪の発生から約半年後の年末の不用品一斉処分の日に,本件証拠物を焼却したものであり,また,西宮署においては,本件犯罪につき,「証拠物件保存簿」及び「犯罪事件処理(指揮)簿」が作成されていなかった,というのである。
2 多数意見は,被害者が捜査によって受ける利益自体は,公益上の見地に立って行われる捜査によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護された利益ではない,という。しかしながら,犯罪の被害者がその所有に係る証拠物について有する利益は,被害者が捜査機関の捜査によって受ける利益とは別個のものである。犯罪の被害者は,個人の尊厳が重んじられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される人格的権利を有するものであって,刑事手続における告訴権も,人格的権利の一部をなすものということができる。被害者がその所有に係る証拠物を捜査機関に提出するのは,犯人の検挙・処罰に役立てることを目的とするものであって,告訴権の行使の一内容,あるいは告訴権に類似する人格的権利の行使ということができ,当該証拠物が捜査機関において捜査のために有効に活用され,捜査上必要である限り適正に保管されることの利益は,単に所有権の一部を構成するにとどまらず,上記の人格的権利に由来し,法的に保護された利益というべきである。そして,被害者がその所有に係る証拠物を捜査機関に提出する際,所有権放棄書に署名押印しても,それは,当該証拠物が捜査及び公訴の遂行上で必要性がなくなった場合に,その返還を求めないということを意味するにとどまり,当該証拠物が捜査機関において有効に活用され,適正に保管されることの利益まで放棄することを意味するものではない。したがって,捜査機関が正当な理由なく当該証拠物を廃棄すれば,被害者の法的に保護された利益を侵害するものとして,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求の対象となるといわなければならない。

第2 結論
 「適正処罰請求権」は憲法上の人権として保護されるべきものであり,仮に,「人権・権利」と認められなくても,少なくとも重大な法益であり,不法行為法(国家賠償法)上の「権利」としての要件を充足する。
 裁判所におかれては,従来の古典的な見解にとらわれることなく,(下級)裁判所に(も)託された「法創造作用」に基づき,国民の納得を得られる判断を賜りたい。これこそ,「司法改革」に託された国民の悲願であると信ずる。