模擬裁判顛末記1

模擬裁判がやっと終わった。公判前整理手続2日,裁判員裁判3日,連日連夜の長時間弁護団会議(裁判中の2日目は,下腹部痛・メイラックス服用による眠気で気合いが入らなかった)。しかも,模擬裁判最終日(裁判員評議中)に「本物の裁判」の証人尋問2人をこなした。
一杯飲んで事務所に帰ると「電話下さい」の伝言メモが鬼のように書いてある(「必ず今日中に電話をしてください」と事務員さんに叱られる)。弁護士としての逸失利益は,国賠で請求するつもりだ(ウソだから安心してね。所長)。
これからしばらくは,N違法裁判所(じゃなくて地方裁判所)の模擬裁判顛末記を書くつもり。もちろん,守秘義務条項に抵触する情報や,信頼関係破壊につながる情報は書かない。

1回目の「牛刀殺人事件」は「おさらい会」であったが,今回の「刺身包丁殺人未遂事件」はガチンコ勝負であった。特に検察官は,「模擬検察官役」も裏方も異様にテンションが高かった。(以下検察官を「P」,弁護人を「D」,裁判長を「J」とそれぞれ略記する。)

DもPも冒頭陳述の最中に「異議!」の出しまくり。

Pが冒陳で被告人さんの前科前歴に触れた段階で
Dが「異議! 裁判員に予断を与える」
「J 異議却下」

B冒陳で「疑わしきは被告人の利益に」と説明したとたん,
Pが「異議! 冒陳は法律論を展開する場ではないし,Jの裁判員に対する説明で分かるはずだ!」
「J 異議却下」

要旨の告知 
D「ここは全文朗読して欲しい」 
P(約2分間弁護人の要望の不当性を糾弾する。説明が終わったかなと思ってD立ち上がるとPが発言を継続するので着座するという事が3−4回繰り返され,当職の痔が悪化した)
D「ただいまのPの説明時間があれば,該当部分の朗読は出来たはずだが,それはさておき,○○○○。先ほどのは「単なる要望」であったが正式に「証拠調べ方法について異議」を申し立てる。
J(双方の顔を立てる穏当な訴訟指揮)

証人「○○さんは,私にXXと言いました」
D「異議! (一呼吸置く)ただいまの異議は,証拠排除申請の趣旨です。証人の発言は,伝聞供述なので証拠能力はありません」
P「(何か言っていたが,忘れた)」
D「立証趣旨について釈明を求める。伝聞証拠となるかどうかは,『発話行為自体』が立証趣旨なのか『その発言が真実であることが立証趣旨なのか』によって異なる。言っておくが,俺はアンドロメダの帝王なんだぞ」
P「D! ちょっとおつむが○○。それはJの判断に任せる」


判決は,今後の模擬裁判に影響を与えかねないので,秘密。


判決が終わって記者会見。Pはプレスに対しておもむろにペーパーを配布した。「Dは『争点明示義務』に違反したので遺憾である」
当方(D)は,即興かつ即効に応酬する「私どもDは,Pに対して『合意書面作成提案』をしてきた。Pがこれを拒否したことは,遺憾である」
地裁所長・J「法曹三者でこれからも研究を重ね,国民に開かれた裁判を実現するべく努力する所存です」
とか言って記者会見はお開き。