サラ金被害者は律儀な人が多い

いわゆる「町弁」は,どこでも同様だと思うが,自己破産・債務整理(過払いを含む)・民事再生の事件(以下,適宜「負債案件」という)は,弁護士業務の相当部分を占める。
弁護士先生自らが,これら法律事務の最初から最後までやるわけではない(と思う)。「負債案件」においては,最初の相談で弁護士が依頼者と面談し(簡単なものは30分,入りくんだものは1時間),負債案件の概要を聴き取り「自己破産」・「債務整理」・「民事再生」のいずれを選ぶか,方針決定をする。
相談者は,充分な資料を持ち合わせていないことも多い。その場合は,「どの方向にするか」玉虫色にしたまま,取りあえず「介入通知」を出す。これで依頼者への督促は止むので,依頼者はひと安心。
で,介入通知に対する回答が「債権者」から返戻される。サラ金に手を染めてから今日にいたるまでの詳細(「取引履歴」という)が開示される。しかし,
−すんなりと取引履歴が開示されるわけではない。その辺の交渉は事務員に任せる。事務員さんでは処理しきれない場合,弁護士先生がサラ金に架電し「私は,御社の株を10000株持っていまして,株主総会に○○○○」とか「あなたのところの株は,今,空売りを仕掛けていてねぇ」とか,「アンドロメダの帝王たる予をば侮辱する気か!」と恫喝する。この辺が弁護士の腕の見せ所である。−事務員さんが,「利限法法圧縮ソフト(サイむ整理クンというソフトには,CDにサイの絵が描いてある。あと,同業者で<五右衛門>という先生がソフトを開発しているのだが,かなりオタクなところまで目の行き届いたソフトである。未決勾留計算ソフトなどというものがあり,被告人の皆さんは大喜び)」で取引履歴を計算し弁護士と事務員さんが協議して上記3方向のいずれかを決定し,依頼者に「見込み」を伝え,了承を取り付ける。

依頼者にとっても,弁護士にとっても一番「おいしい」仕事は,「過払い」である。
サラ金被害者は,律儀な方が少なくない。
「いつごろから,借り始めたんですか?」
「確か,昭和天皇が亡くなりそうなころから(田中角栄さんがどうしたこうした。○○水害のころから等々)・・・・・」
「(事務員さんに預かったサラ金カードを持ってこさせる。デザインを見て)あぁ,なるほど。それで,今日に至るまで,律儀に払っていたのね?」
「はぁ,それでも元本がちっとも減らないのですよ」
「(電卓を叩きながら)○○さん,400万円くらい戻ってきそうですよ」
「え”未だ,400万円も払わないといけないんですか?」
「逆です。400万円は戻ってくるんです(以下利限法の説明をするが,依頼者は信じてくれない)」
「で,この事件は,絶対にトリッパグレはないから,着手金は○○円にしておきますが,報酬は,戻ってきた金額の○割くらいでお願いできますか?」
「センセー,ほんとにそんなこと出来るんですか? 戻ってきたお金は,全部センセーにあげますから,お願いします」
「別に全部貰いたいとは思いませんて(N弁)。今でも生活は結構苦しいんでしょう? 300万円以上戻ってきたら,一挙に生活を立て直せるじゃないですか?」
といった感じである。
詳細は省略するが,このような案件は結構あり,「過払いを計算すると約○00万円」という事件を処理したことがある。一応訴状を出して,第1回弁論後,○80万円に負けてやって(弱気だろうか?)和解した事案がある。