会内学習会(新会社法)

会社にお金を貸せる場合に注意すべき点
(2006年5月施行の新会社法

1 同一性確認
(1)  類似商号規制の廃止→同一市町村内に同業種営む同一・類似商号の会社が設立されることが可能となった。
→a 同一住所における,b同一商号のみ禁止。
(2) 融資詐欺の可能性が出てくる。
「西堀通2番町(株)藤田商店(米屋)←伝統ある会社」・「西堀前通2番町(株)藤田商店(米屋)←金融詐欺のための会社」
 「西堀通2番町384番地 (株)藤田商店←伝統ある会社」・「西堀通2番町384番1 (株)藤田商店←金融詐欺のための会社」も許されるかも知れない(運用はまだ固まっていない)。
(3) 金融機関・金融業者の融資の実態。
来店してもらったうえ,代表者(身分証明コピー)と面談,資格証明徴求というパターン。で,詐欺会社の藤田社長が伝統ある会社の藤田社長になりすまし,「西堀2番町の藤田商店」といって融資を申し込む。
 「では,商業登記はこちらで取りますので・・・・」と対応する。会社所在地欄には「西堀前通2番町(株)藤田商店(米屋)←金融詐欺のための会社」と書き込む。融資実行・・・・等々のトラブルが見込まれる。
 (手形取引でも同様のトラブルがもっと容易に起こると予想される)。
(4) 防止策
 慎重な同一性確認・インターネットサービスの利用。
2 与信意思決定
(1) 会社の機関が多種多様になる。総会・取締役(この二つは必須)取締役会,会計参与,監査役監査役会,会計監査人,3委員会←会計参与を設置しない場合でも8通りの選択肢がある。
(2) 取締役会設置会社
旧法と格別変わることはない(ただし,業務執行取締役制度)。
 「多額の借財」は取締役会の議決が必要(362条)
a 書面決議
提案事項について,取締役全員が,書面または電磁的記録で同意した場合には決議があったものと見なすことができる(旨を定款に定めることができる)。
 電磁的記録の場合?→書面化する作業の必要。プリントアウトしたうえで,代表取締役の奥書を付ける?
 (従来の「取締役会議事録」も大半はインチキだった−金融機関も承知のうえのこと−点を考えると,体制に影響はないか?)
b 「重要財産委員会」の消滅→特別取締役のよる取締役会(要件 社外取締役一人の議決,取締役の数が6人以上,監査役一人のみの出席)←書面決議は不可(これくらい大きな会社になると,インチキはしないだろう)。←設置会社かどうかは,登記による確認が可能
(3) 取締役会非設置会社(有限会社型)
a 各取締役が代表権を有する。
b 業務執行の意思決定は,過半数で決める。(例外 定款で代表取締役を定める)。
c (多額の)融資にあたっての留意点
取締役が何人いるか確認,複数の場合「b」についての決定書又は株主総会の議決書が必要。
(2)の場合に比べると,小回りがきく会社なので,「取締役会不存在」などのようなトラブルは生じにくいであろう。

3 吸収合併・吸収分割
(1) 契約時に定めた一定の日時に効力が発生する(登記時ではない)。
(2) 消滅会社の解散は,登記の後でなければ,第三者に対抗できない(善意・悪意の区別はない)。
(3) どのような場合,「対抗問題」が生ずるか?
(この点,参考論文は詰められた議論がなされていないのだが・・・・)
EX 合併によってA社が3月31日限り消滅し,B社が存続会社とすることとされた。
a 4月1日にA社(例えば債務超過会社)に融資し,その後登記を長期間を了さなかった場合た場合→B社に返済を求めることができる(これは対抗問題ではない)。
b 上記の事例では,A社(債務超過会社)に返済を求めることができる(これは対抗問題である。例えば,B社の急激な信用悪化などの場合)。←ただし,会社経理は,合併の時点で合算されるので(?)この考えが正しいか疑問。
c B社に融資をしたばあい,A社に返済を求めることができる(これは対抗問題ではない)。←B社の信用悪化の場合など。上記と同様の疑問。
d もちろんB社にも返済を求めることができる(これも対抗問題ではない)。
参考図書は,「A社と契約すべき」というが,その根拠は,よく分からない。
(外に,「対抗問題」が考えられるかもよく分からない。)
4 その他(破産と取締役)
 破産手続開始決定は取締役欠格事由にならない。
 零細企業における代表者の個人保証(個人は自己破産して,代表者の地位にとどまり,会社の存続を模索できる)。
  破産者を取締役にするかどうかは,株主の自己責任ではあろう。しかし,破産者を取締役にして会社債権者が迷惑を被らないであろうか?