年末年始の弁護士業務(上訴等)

年末の上訴は神経を使う。
色々な事情があって,ある事件について上告(+事件受理申立 刑訴法406条)した。起案・郵送したのは,昨年の12月28日夕刻であった。アウトルックに「12月30日 高裁に電話 上告申立届いたか確認」と打ち込んだ。
30日に自宅から東京高裁に電話した。「こちらは,東京高等・地方・簡易裁判所です。当裁判所の業務は終了しました。」というつれないテープ録音が流れた。事務所に高裁各部のダイヤルイン電話のチラシがあったことを思い出し,わざわざ電話を架けるためだけの用件で出所した。ダイヤルイン電話に架電したが,やはり,テープがむなしく流れるのみであった。
この種の大きな組織の電話は,末尾が「1」であることが多く,末尾を「2」に替えるとつながることもあるので,試してみたら,同様であった。
上訴期間は,14日である。私は,この種の期間制限については,出来るだけ保守的(初日算入終日不算入の原則)に考えるようにしている(条文を見るのも面倒だし・・・)。指折り数えると,翌年1月3日は,いわゆる「祝日法」でセーフ,1月4日もセーフ,5日ではアウトである。
官公庁は,4日から業務開始が通例なので,4日の午前中に上告申立書等が届いているか確認した。
書記官「未だこちら(高裁○○刑事部)には来ていません。センセーいつ郵送されたんですか?」
当職「確か,28日に事務員さんが帰宅の折,ついでに郵送すると言っていたので・・・」
書記官「最高裁に出していないですよね。」
当職「私も私のところの事務員さんもそんな初歩的ミスはしません(実は,民事の上告「趣意書」を出張のついでに最高裁に持参して,書記官にミスを指摘されたことはあるが,「上告状」あるいは「上告申立書」は原審に出すことぐらいは,当然に知っていた)。
書記官「こちらの裁判所は,12月29日(30日?)から1月3日まで,郵便の配達を止めてもらっているのです。」
当職「配達証明にしておけば良かったのだが・・・」
書記官「センセーだいじょうぶですって,普通郵便でも届きますよ。何しろ大きな裁判所ですから,当庁に郵便物が届いても,部に届くまで若干タイムラグがあります。庁内に届いた時点が期間制限の基準となりますので,そんなに心配しないでください。総務課にも連絡してみますから。」
当職「そりゃ,普通は,普通郵便でも届くが,万一でも事故があると大変だし・・・・」
書記官「上訴期間は,初日不算入です。ですから,明5日に届けばだいじょうぶですよ。」
当職「あぁ,そうなの。ともかく,今日届いたらその旨電話してください。明日の午後4時くらいまでに届かなかったら,新幹線に乗って届けに行きます。」

4日午後5時前,自宅に電話が来た。
書記官「未だ当部に届いていません。総務課にも確認してみましたが,未だ郵送されていないそうです。最終の郵便配達は,午後5時半なので届いたら連絡します」とのことであった。しかし,5時半を過ぎても電話がない。6時ころ,こちらから電話したが,またしても「当裁判所の業務は終了しました」との案内電話であった。
「たった4−5枚の紙を届けるのに,往復3万円の旅費で半日潰さないといけないのか。むなしいなぁ。」と思いながら自宅で岡口裁判官の要件事実マニュアル株式投資必勝法の本を読んでいた。1月5日,10時半ころ,担当書記官から電話があった。「上告申立書・事件受理申立書・判決謄本費用の収入印紙・郵券確かに当部に来ました。良かったですね。ところで,判決謄本は刑訴規則の関係上特送でお送りすることになるのですが,普通郵便相当額の郵券しか郵送されていないので,追完してください」
当職「事務員さんは,10日から出勤なので,10日に手配します」
ということで一件落着であった。

こんなに気をもむなら,30日に<念のため,本日付の申立書等を送付します。28日付の申立書が届いていることを解除条件として,この申立は,取り下げます>という付せんを付けて,配達証明付きで送れば良かった。

要件事実マニュアル〈上〉

要件事実マニュアル〈上〉

要件事実マニュアル〈下〉

要件事実マニュアル〈下〉