保釈請求と書証同意不同意・罪状認否見込みとの関係

実務家(弁護士)の間で,起訴直後の保釈申請と書証同意不同意(罪状認否)の見込みで盛り上がっている。結構上げ足取り的なコメントもあり,全部を読むのは愉快ではないが,私見を述べる。
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実証的議論をするためには,保釈請求後,検察官の意見書を謄写することが必要である(刑訴法の反対解釈で最近意見書や勾留理由開示法廷調書の謄写が認められない事例もあり,一審強化で議題にされた)。検察官がどのような理由から「不相当」としているのか,良く分かる。刑事記録(準抗告記録も含めて)は,書庫の奥に仕舞ってあり,すぐに取り出すことが出来ないこと,守秘義務違反を避けるためには,慎重な書き込みが必要なことなどの理由で,実証的なことは,後日書く。少なくとも捜査段階における「否認・曖昧な供述(罪体のみならず量刑事情を含む)」は検察官の保釈不相当意見で言及されている。また,第1回公判期日を迎えておらず,書証の同意・不同意も明かでない,被告人は外国人であり海外逃亡の虞がある,被告人は平成○年に離婚し,以来一人暮らしであり身軽に逃亡できる。被告人は○代目○口組○○一家○○組の若頭であり暴力団構成員であると言うような「別紙意見」もあったような記憶がある。私は,この種の差別は嫌いなので,思いっきり準抗告する。
実務家はご承知のとおり,保釈却下決定書は,「○号該当」としか理由の説明がないので,(保釈)原審裁判官が何を考えているのかは,分からない。保釈面談をしても腹の底を空かす人は,余りいない。
却下に対する弁護側準抗告,保釈認容に対する検事準抗告に対する裁判所決定を見ると,(当地は田舎なので,民事合議体が「刑事部」に早変わりする),「否認」とか「書証に対する弁護人の意見が明かでない」を理由として,弁護人準抗告を棄却するという露骨な事例は記憶にない(腹の底は分からないけどね。一般に民事プロパーの裁判官は,刑事に比べると検察官との関わり合いもほとんどないし,結論はどうであれリベラルな判断が多い)。
弁護人準抗告(1件は接見禁止一部解除の事例)を通してくれた前例はこれまで2件ある。それから,保釈認容に対する検事準抗告を棄却してくれた事例も3−4件ある。ほとんどが外国人やY系の私選事件で,依頼者の熱心さに根負けして準抗告しているわけである。
検事準抗告に対する意見書を書く余力がなく事務員さんに書いてもらい,私が点検のうえ,出したことがある。暴行(頭突き)の事案なのだが,事務員さんは,「凶器の隠匿の虞と検察官は主張するが,本件は頭突きによる暴行であり,武器や凶器を使ったわけではない。それとも検察官は,被告人が自分の頭をどこかに隠すことを恐れているのであろうか?」という至極まっとうな意見書を書いてくれて,当然,準抗告棄却であった。
準抗告の判断待ちだから釈放指揮は出せない」と馬鹿なことを言った副検事がいた。ちょうど修習生旅行中だったので(原子力発電所産廃施設を見学中であった),携帯電話で「あなたじゃ話にならない。次席を出せ。国賠やるぞ。そういゃ御社の検事総長はクリスチャンだよな。総長は新札の肖像画に関して新渡戸稲造の件で関係当局に圧力を加えたそうじゃないか? 教文社から裏をとっているからね。クリスチャン舐めると後が怖いよ。」と恫喝しまくった。副検事はこの電話に恐れをなし,停止決定を申し立て(認容),その30分後に「検事準抗告棄却」となった。東京の依頼者だったのだが,中越地震のためその日は帰りの交通手段がなかったらしい。
ある事件のついでに,「Barlさん,例の事件の保釈金なんですが,もう一声200万でお願いできませんか。今日中にお金を用意できるのなら,会計課に残業を命じますので・・・」と準抗告裁判長から声を掛けられて,涙がちょちょ切れた。
実はその裁判長は,関連事件の勾留状発布裁判官で,前記保釈決定の後,関連事件の勾留理由開示で締め上げた(法曹界には人情もなれ合いもない)。
偽装結婚の事案であった。婚約記念写真を疎明資料に添付し,「このような絶世の美女から<結婚してください>と申し向けられ,<偽装だけの結婚>をしようという独身男性がこの世に存在するはずはないと思われるし,カップルは,心の底から喜んでいる様子が窺われるが,裁判官はどのようにお考えか?」「(フランシスコ会新約聖書聖ルカ伝福音書を添付資料とし)聖母マリアと聖ヨセフとは,結婚した後もイエスが降誕されるまで夫婦関係を持たなかったが,こういうのは,『偽装結婚』に該当すると裁判官はお考えなのか?」と徹底的に糾弾した。裁判官は,目をウルウルさせて「Barlさん,この程度で勘弁してください」と言ったので,勘弁してやった。その後,依頼者の嫌疑は晴れ,その被疑者は10数日で釈放された(検事パイ)。

続きはしばらくしたら書きます。