ライブドア被害者への素朴な疑問(集団訴訟)

           ライブドア集団訴訟について

ライブドア被害者を救済するために,本格的弁護団(消費者系弁護士の一流どころがメンバーの様子)が出来たことはとても良いことだと思うし,弁護団の皆さんにはがんばってもらいたい。私も,地方弁護団設立の際には協力する気持ちはある。
そうはいっても,私は弁護士であると同時に株式投機家(「投資家」と自称するつもりはない)なので,投機家の立場としての素朴な疑問が若干ある。以下,疑問の骨子を記述する。

1 ファンダメンタルの問題
ライブドア社の株を買った「被害者」は同社のファンダメンタルを分析して投資(投機)したのだろうか?
ライブドア社(その他同社関連の法人・個人)に対する損害賠償請求訴訟の請求原因事実の骨子となるものは,「虚偽の風説の流布」・「粉飾決算」になるように思われる。
しかし,ライブドア社の株を買って被害を受けた人の90パーセント以上は,「虚偽の風説の流布」・「粉飾決算」に「惑わされ」たものではないと思う。
粉飾決算」の問題でさえ,論点が多数ある。
(1) 粉飾決算??
粉飾決算」はいつ「公表」されたのかしら?? (公表された)粉飾決算に基づいて「ライブドア社の株を購入しようと」考えた人は,殆どいないであろう(一人もいない????)。
「<資本の増加(非収益)>」に記載されるべきものを,「特別利益(収益)」に計上した?? これが,「企業会計原則に反する」ことは司法試験の会計学でも習っている初歩的問題だけれどもね・・・・。詳細な会計的解説は省略するが,B/S上の「資産増加」は間違いない。しかし,これを,「資本」の部に掲載するか「当期利益」に掲載すべきかはタコ足配当したのならばゆゆしい問題ではあるけれども,そういう問題はない。ともかく「被害者」はファンダメンタルズを分析して株を買った分けではないだろう。
おそらく殆どの「被害者」は「細木という占い師が5倍に上がると予言していた」とか「ホリエモンがエポックメイカーに見えた」とか「武部幹事長の応援を得て国政選挙に出馬した」とか「東大中退(頭良さそう)」とか,「プロ野球に進出しようとした」とかそういう<雰囲気>で欺されたのではないか?
(2) 虚偽の風説の流布

堀江氏が刑事裁判で起訴された「虚偽の風説の流布」はきわめてトリヴィアルな問題である。このような「(法律・会計・証券)専門家でも何がいけないのか良く分からない」「風説流布」で,投資を決定した人は,おそらく22万人中1人もいないと思われる。

おそらく殆どの「被害者」は「細木という占い師が5倍に上がると予言していた」とか「ホリエモンがエポックメイカーに見えた」とか「武部幹事長の応援を得て国政選挙に出馬した」とか「東大中退(頭良さそう)」とか,「プロ野球に進出しようとした」とかそういう<雰囲気>で欺されたのではないか? しかし,これが虚偽の風説の流布に該当すると言う主張は,かなり無理筋である。だって,全部本当のことだからね。
これらのなんだか分けの分からない「材料」で投資行動を決めるのは,余りに幼い。

2 チャート分析
いわゆるライブドアショックに至るまでの同社のチャートは,(後講釈かも知れないが)おもしろい動きをしていた。私自身,ライブドア株に注目しチャートの動きを分析していたら,ブラックデイの日に買ってしまったかも知れないね。
しかし,そうはいってもライブドア社の被害者がチャート分析のうえで,投資を決断したとはどうしても思えない。
チャート分析家(概して短期売買派)は,マザーズのような値動きの激しいチャートにはついて行けないことが多い。

3 投資家(投機家)の資質
yahooにおけるライブドア掲示板を見ているが,議論が余りに稚拙で不勉強な感じがする。私は,FCDPとかアーバンコーポレーションとか岡部とかヨロズとかレンゴーとかのyahoo掲示板を時々見ているけど,書き込みしている人は,皆,株に対して真剣に取り組んでいて,勉強になることが多い。


私自身,消費者系弁護士と一緒に「統一協会」関係の訴訟や「ココ山岡」訴訟の一翼を担ったことがある。
両訴訟に共通して言えることは「欺す方も欺す方だが,欺される方も欺される方だ」という批判が可能であるということである。更に,「青春を返せ(対統一協会)」では「昨日の加害者が今日には被害者面」という批判もあったように記憶している。まぁ,クリエイティブな訴訟というのは,この種の「常識的」「素朴な」疑問があることは多い。この批判に対してどのように反論するかは,考えておいた方がよいだろう。