こういう人は法律家になってはならない

Barl-Karth2006-03-17

今まで,色々な検事とお付き合いしてきた。中には非常に変わった人がいて,「極左」を自認している検事もいた(数年前修習生から聞いた話。左翼検事と法廷で対峙したことがあるが,−オーバーステイ(国選)−平凡な論告求刑をしていた)。修習生時代,昼食のカレーライスをば「箸」を用いて食する者がいて,その修習生は検事(訟務事件担当)に任官した(「俺は右翼だ。日本国を守ることが俺の使命だ」と常々言っていた)。

恐らく,ほとんどの被疑者・被告人は,取調検事・公判立会検事に感謝しているだろうと思う。ほとんどの検事は,適正処罰と同時に被疑者・被告人の更生のために努力されているのだと思う。
今まで出会った検事の中で,一人だけ許せない者がいる。取調で被疑者(被告人)に一生癒えない傷を付けてしまった検事である。
「この検事はちょっとおかしいな」と思ったエピソードがあった。
当地は田舎のうえ,私の事務所は,検察庁から歩いて5−6分の位置にあるので,検察官と街ですれ違ったり(交差点で美味そうにタバコを吸っている不心得者もいないではない),昼食の折,同じ飲食店で出会ってしまうこともある。
私がある飲食店に入ったところ,その検事は,何事か大声で叫び(失礼だ!とか何とか)前払いのお金の返金を迫ったうえ,何か捨て台詞みたいな言葉(もう二度とこないからな!!)を残して,店を出て行った。「AKTsさん,何かあったのですか?」と当職が尋ねたのだが,「何もかにもないよ」と回答していた。その店は,早くておいしいということで評判なのだが,昼時には客が多すぎ,店員は無愛想で,場合によっては客に粗相をすることもある。客のほとんどは,店員さんの苦労を肌で感じ取っているので,文句を言ったりはしない。
その検事がどの様なトラブルにあって,あのような言動に及んだのかはよく分からないが人間性に問題があるな」と感じた。
それから何日もたたないころ,私は,その検事が捜査主任を務めた被告人の弁護をした(国選,在宅事件)。罪名は秘するが,警察官調書を見る限り,とても悲惨な境涯にあり,また,取調に際して,心に傷を付けないように配慮する必要があることは充分に読み取れた。だから,その被告人との面談でもいつも以上に気を遣った。警察官もその被告人の生い立ちに同情し,文字どおり泣きながら調書を作成したのだそうだ。
検事の取調によって,ただでさえ傷つきやすい被告人の魂(警察官の取調によって少しは癒されていたと思う)は,ずたずたにされた。「まぁ,どうせこんな事件罰金だからね。罰金求刑で勘弁してやるよ」などとヘラヘラ笑い,ものの15分くらいで調書を巻いたのだそうだ。
その取調を受けた日の夜,被告人は自分の手首をカッターナイフで切り刻んだ。被告人から,この話を聞いて,普段滅多に怒らない私も,怒ると同時に情けなくて涙が出た。いったい何のために検事をやっているのだ!
主任検事は,公判立会も担当した。
弁護人「検察庁での取調はどうでした?」
被告人「・・・。いえ・・普通でした。」
弁護人「・・・。そう。」

判決は罰金刑であった。通常,国選弁護人の役割はこれで終わるのだが,泣きじゃくる被告人を待合室で落ち着かせ,事務所に連れて行って,今後のことを話し合った。裁判所は被告人に対して訴訟費用(弁護士費用)負担を命じたが,「免除願い」を提出(認容)。罰金を一括で支払えないというので,徴収係事務官に頭を下げたり恫喝したりして分納をお願いする(罰金徴収カードには,「分納欄」が6−7行あったのでまぁ,安心したのだが・・・)。
その後,被告人は正業に就き元気でいるというので安心はしているが,未だに,その検事だけは許せない。
実務修習担当の弁護士は,修習当時の検事に対して,「君は検事に向いてない」と忠告したのだそうだ。修習担当は,彼の人間性を見抜いたのだろう。
その後,当該検事は,ある被疑者(複数)に対し,極めて問題のある取調(「○○弁護人は問題があるので解任した方がよい。私が適任な弁護人を推薦する」と被疑者に慫慂した)を行ったことが明るみに出,ついに弁護士会で「対処」することとなった。
その男は今でもある大規模地検において検事をやっているらしいが,私の見立てでは,矯正はかなり困難と思われる。