法テラスの暗澹たる未来(その1)

私がクリスチャンであること,「危険な法律相談」という表題で,「ハーザー」に連載していることは,ブログの読者もご承知かも知れない。
原稿の締め切りが明日なので,いわゆる「司法改革」の話を書こうと思って頭の中を整理し始めたのだが,今年の10月から起こる出来事,平成21年までに発生する出来事(裁判員制度・被疑者国選の全面実施)等を考えると,明るい展望は全く開けない。
日弁連の歴代執行部は,現在の日弁連の惨状・これから起こるであろう数々の悲劇を予見できなかったのだろうか? 
私は,数年前単位会弁護士会の副会長を務め,日弁連執行部の内実を垣間見ることができた。弁護士会総会における私の「副会長退任挨拶」は,「日弁連というのがいかに非道い団体か,副会長時代に体験できた。これからは,反日弁連執行部でやっていく」というものであった。
また,副会長在任の前後から複数任期にわたり,日弁連刑弁センター委員を務めてきた。その間,私は,委員として,「被疑者国公選の運営主体」について発言してきた。私の意見は,「被疑者国公選制度の運営主体は『弁護士会』とすべきである」という至極真っ当なものであった。この意見は,かなりの賛同者を得たが,刑弁センター執行部は,私の意見を葬った。
で,結果はこのザマだ。弁護士が国選弁護人に選任されるためには,法務大臣監督下の司法支援センター(愛称「法テラス」)と弁護士とが,基本契約を締結しなければならない。こんな馬鹿な話に依頼者である「被疑者・被告人」は納得するだろうか? 法務省と契約した人間が法務省と闘うのだよ!
民事事件と対比すれば,このような話がいかに呆れかえったものかは良く分かる。
例えば,「○田電気」の労働者が,賃金未払いの相談にきたとする。ところが,相談を受けた弁護士が,「○田電気」の株主だったり,顧問弁護士だったり,経営者と飲み友達だったり,ポイントカードをよく利用するエンドユーザーだったりする。良識ある弁護士であれば,労働者から相談の内容を全部聞き取る前に「○田電気の法律相談ですね? 残念ながらこれ以上あなたから話を聞くわけに参りません。実は,○田電気とは,利害関係があるんです。相談料は入りません。もちろんあなたから今日聴いたことは○田電気には言いません」と申し上げて,委任をお断りする。
刑事国選弁護では,こういう至極真っ当な事件の断り方ができないのだね。

まぁ,論より証拠,ほんの先ほど法テラスに電話してみた。その対応ぶりは,別の日記に書く。

http://nomura.asablo.jp/blog/2005/10/12/105515