貧乏人は大人しくしてさっさと判決をもらえ(法テラス問題)

Barl-Karth2006-08-08


Q4. 支援センターは、どのような業務をするの?
(5)国選弁護関連業務・・・   被疑者・被告人段階を通じ、一貫した刑事弁護体制を整備し、裁判の迅速化、裁判員制度の実施を支えます。

http://www.moj.go.jp/SHIHOUSHIEN/qa.html#qa4



刑事事件で腕の良い弁護士,それなりの業績を積み重ねて同業者やその筋の人*1から評価を得ている弁護士は,大部分,法テラスと契約しないと思われる。その理由は,以下のとおりである。
無罪をもらう。保釈をもらう。勾留理由開示で依頼者を励ます。接見禁止一部解除を得て被疑者にを元気を与える。求刑の半分近い判決をもらう。完全黙秘,署名指印拒否,接見の積み重ねで事件の筋を見抜き適切なアドバイスをして嫌疑不十分に持ち込む。平身低頭して示談をして告訴取り下げや起訴猶予を得る。色々な手段を用いて,お弁当の賞味期限を切らす。
そこそこ腕の良い弁護士は,以上のような成果を得て依頼者から感謝され,そして,そのような成果に見合った報酬を得ているのである。
ところが,法テラスでは,このような成果が全く報酬に反映されない。

法テラスと契約するとどうなるか?
上記のような弁護人の成果・腕の良さはほとんどすべて,報酬に反映されないのである。「示談をしたら3万円のお手当」というだけである。*2
この「示談手当」も考えてみるとばかばかしいものである。
例えば5件の窃盗を犯した被告人がいるとする。5件中4件の示談がとれた。この場合,4×3=12万円のお手当は出ない。それどころの話ではない。1件だけ被害者がへそを曲げて示談してくれない場合,「示談手当3万円」は1円ももらえない。
「お弁当賞味期限」の問題だが,このような弁護方針は,「法テラス契約弁護士」はやってはいけない(法テラスから制裁を受ける)。「先生! あと一ヶ月するとお弁当の賞味期限が切れるんです」と依頼者から懇願されたら,それなりにお弁当を処理するべく努力するのが依頼者への忠実義務だろう。

以上の点を勘案すると「こんな馬鹿みたいな契約ができるか!」というのが,敏腕刑事弁護士(刑事弁護でそれなりに稼いでいる弁護士)の感想である。 

そのうえ,「法テラス」と契約すると,私選弁護活動でも制約を受ける可能性がある。つまり「25万円問題」である。
法テラスの事務局長・地方事務所長から「センセー。私選の標準報酬額は,25万円ですよ! 60万円ももらってはいけませんよ。それから,事件は1ヶ月以内に処理するよう努力してくださいね! 何しろ,事件の迅速・効率的処理が法テラスの使命ですからね。いたずらに事件処理を先延ばしした場合は,先生に事件を配点しませんからね」と厳しく指導される可能性があるのである。
そんな制約を受けてまで法テラスと契約しようとする弁護士は,「崇高なボランティア精神のある弁護士」か,「刑事弁護の腕が良くないけど 事件を配点してほしい」という「失○弁護士」であろう。
ボランティア精神のある弁護士から弁護してもらう被疑者・被告人は幸福であろうが,失○弁護士の弁護を受ける被疑者・被告人は不幸である。不幸を味わった被疑者被告人は,法テラスに苦情を申し立てたり,弁護士会に懲戒申立をしたりということになろう。

まことにまことに法テラスの未来は,暗澹たるものがある。アーメン

*1:定住外国人・反権力の人・時々警察につかまってしまう人)

*2:http://www.moj.go.jp/SHIHOUSHIEN/news/keiyaku.pdf