法テラス国選=八百長弁護?

契約拒否に対する反応(法テラス)

法テラスと刑事弁護基本契約を締結するか,それともこれを拒否するかは,実を言うと最後まで迷っていた。私が,法テラスとの契約を拒否する(=10/02以降の国選は受けない)というのは,色々な意味で,結構インパクトがあるのだね。
東京方面の弁護士会は数千人が構成員で,恐らくお互いの顔など知らないけど,当地のような地方都市では日常業務(訴訟の相手方・○○訴訟弁護団会議・委員会活動のメンバー等)で頻繁に顔と顔を合わせているのだ。だから,「花園に爆弾を投げ込む」ような行為は出来れば避けたかった。
本年6月ころ,弁護士会事務局から,「国選当番(この日は国選が割り当てられる可能性があるから,旅行・外の事件の弁論・相談入れないでくれということ)」で10月2日以降の割り当てがあり,「どうしようかなぁ。これ以上結論を先延ばしに出来ないよなぁ。」と思い,事務員さん(2名)と相談した結果,「10月2日以降の国選受任拒否」を関係者(会長・刑弁委員長・弁護士会事務局長)に通告した。「拒否」の文書を起案しファックスで流す際は,本当に涙が出るほど辛かった。
事務員さん2名に,「実は,法テラスというものが出来たのだ。法テラスは,法務省法務大臣が監督している機関だ。国選弁護を受けるためには,法テラスと契約する必要があるんだ」と説明したところ,事務員さんは,「信じられない」という顔をしていた。
で口々に,この制度を非難し始めた。
「従業員が社長に反抗するようなものでしょう。勝てるわけないじゃないですか。そんなの八百長試合ですよ。先生も大変な努力をして無罪判決をもらったけど,そんな希望は今後はなくなるのでしょうよ」・「そんな契約をして,うちの事務所の評判はどうなるんですか。お客さんが納得しませんよ」と言うことだ。
「だいたい,訳の分からない私選で先生もイッパイイッパイでキャパを超えているのだから,これ以上事件を受けたら弁護過誤を起こすだけでしょう。今日だってオランダから<弟の件はどうなったか>と英語で電話が来ているんですよ」と言うような指摘もあった。
別にうちの事務所の事務員さんは,特定の政治党派に属していたり,特定のイデオロギー固執しているわけではない。むしろ,宗教的な立場や音楽的趣味で言うとボスである私とは反対のスタンスみたいだ。ただし,事務員さんは2名とも社会経験は豊かで,「政治の波に呑まれて右往左往する業界団体のテイタラク」なんかは知っている。
前のエントリにも書いたように,私が「法テラスとの契約を拒否する理由」はそんなにトンがったものでもないし,アイデオロジー的なものでもない。法律事務所の経営者として,諸般の事情を考慮した結果の決定に過ぎない。

私が弁護士会関係部局に対して,「10/02以降の国選拒否」を通告した後,結構プレッシャーがあり,色んなことを言われている。「○○○名刺交換会」の後,近くの居酒屋で同業者と呑んだところ,副会長(私より期が下)から「今度先生の事務所に行きます。みんなで押しかけますから覚悟してください」と言われた。民事事件の後始末の後,先輩弁護士から「Barl先生さぁ。ほんとに国選やらないの? 先生が国選受けないと,<救われる被告人が救われない>ことになるのよ。先生が弁護することで救われる,先生が弁護しないと救われない被告人はたくさんいると思うよ。」などと言われている。

その反面,例えば,拘置所の待合室で同業者と顔を合わせると,「先生の国選拒否の理由は説得力があり,良く理解できる」と励まされることもある。

私は,一部の契約拒否グループとはイデオロギーが全然違うし「原理主義」ではないのだけれども,色々考えたすえ,やっぱり,法テラスとの刑事弁護基本契約は拒否したのだ。