青法協例会(アスベスト・水俣3次訴訟)

青法協(青年法律家協会)というと,左翼弁護士の巣窟と思われているようだが,当地の弁護士は,60パーセント以上が会員である。「え? この人青法協なんだ!」と驚いてしまうようなメンバーもいる。
ずいぶん前の例会で「金融整理管財人の実務」という,あまりに非青法協的で,いつ役に立つかも分からない研究発表もやったりした。
「青年」ということだが,主観的に「青年」と思っていることが,会員の要件である。だから勲章をもらう歳になっても会員でいられる。ある60歳後半の会員が,「青法協の英訳はヤングなんだ。」とか言って,目を輝かせて,喜んでいた。
どこかの団体と違って「鉄の規律」みたいなものもない。トンネルじん肺で企業側代理人(昔は,ある大型訴訟で被害弁護団事務局長をやっていた)になっても,別に除名はされない。
最近,当地の青法協例会で,アスベスト問題が取り上げられている。
地元の大きな企業で働いて,アスベストに暴露された元労働者がゲストスピーカーだった。
で,企業(職場)相手に損害賠償できないか,国賠はできないか? ということが問題となった。
損害賠償は,「予見可能性」をかなり緩く考えないと(危惧感でOK)と難しいだろう。国賠は,予見可能性の上に,規制義務の要件をクリアしないとダメだ。

そのうえ,当地でアスベストを使って労災認定されている会社なのだが,「更生会社」で,ほとんどが事業譲渡されている。
「今から更生債権を届け出できるのかょ」
「できるかも知れないけど,管財人は異議を出すだろうし,配当は見込めない」

「確か,トンネルじん肺で訴訟中に倒産した企業がいくつかあって,優先債権扱いされたらしい。一種の労働債権と見なせないかなぁ。」
「無理筋ですね」
「破産法みたいに悪意の不法行為債権は免責されないみたいな条文はないのか?」
「あったとしても,それが何か?」

「事業譲渡を受けた企業を被告にできないか?」
「オヒオヒ 国鉄闘争と違うんだから」

どうも明るい展望は開けない。

「じゃ,アスベストメーカー・アスベスト販社を訴えたらどうか?」と元裁判官の会員が発言した。「おお,血液製剤路線だ。」国鉄闘争路線より筋がよいだろう。アスベストメーカーなら上場会社が多く,トリッパグレがない。メーカーや販社なら,「アスベストは危険」という情報を握っていたと思う。労働安全衛生法で,製造物への表示義務があったはずだ。
ということで,次回以降の例会でもアスベスト問題を取り上げることになった。

で,近くの居酒屋に流れて,懇親会となった。上記した元裁判官を私は,「株の先生」と私淑しており,「225先物やオプションを始めようと思う」と相談したら,「やめとけ。金融工学ノーベル賞取った学者だって破産しているんだ。Barlセンセのようなバブル崩壊を体験したこともない素人が手を出すものでない。」と諭された。
水俣病第三次訴訟の話も出た。当地では,ほとんどの会員(70パーセント以上)が水俣2次訴訟の弁護団だった。私も,弁護士登録をしてさっそく弁護団に入り,昭和電工の前でビラを配ったり,演説させられたりした。
「じゃ,三次訴訟の弁護団編成も簡単だろう」と読者は思われるかも知れない。しかし,弁護団編成は困難を極めている。どうして困難なのか,理由を暴露したいのだが,あまりに生々しい話になるし,数人の弁護士(尊敬する大先輩)の名誉に関わることなので,やっぱり書けない。
結局,当該問題(どういう問題かは書けない)との関わりが比較的薄い,私Barl-Karthと私とパートナーを組んでいる某弁護士(大学教授出身)くらいしか受け手がいない。あと,若手の「人権派」で当該問題と関わりが薄いという人は,1−2人くらいしか思い浮かばない。
やっぱりこの種の弁護団は,「<公害闘争の旗手>として全国的に著名な弁護士」に団長になってもらいたい。ある長老を密かにオルグするしかなさそうだ。富山には,2−3人お友達の弁護士がいて,確か,今でもイタイイタイ病に関わっている。「名義上」でも良いから,弁護団に入ってもらえないかなぁ。