法テラスに対する御懸念について
http://www.moj.go.jp/KEIJI/keiji30.html
本年10月2日から業務を開始する日本司法支援センター(愛称法テラス。以下「法テラス」と言います)については,種々の御懸念が示されているところですが,中には誤解に基づくものもあるように思われます。そこで,法テラスの業務内容(特に国選弁護)について,正確に御理解いただくため,主な御懸念について御説明します。
○ そもそも国選弁護は,本年10月2日以降は法務省監督下にある「法テラス」と契約した弁護士が独占的に担うものであり,「法テラス」と契約した弁護士だからという理由だけで,「法務省のひも付き弁護士だ」と考えるのは早計であり,これらの弁護士と法務省・被告人との間に利害相反状態は成立しません。
したがって,例えば,公判廷の席で,国選弁護人と検察官が事件の落としどころについて意気投合し,怪気炎を上げたというだけでは,被告人に対する忠実義務違反は成立しませんし,懲戒されるようなことも当然ありません。
○ 法テラスがその業務を開始した以降の国選弁護は,預貯金・現金等の資産を50万円以上保有していない被疑者・被告人に限って選任されるものです。例えば,「預金は70万円くらい持っているが,一人息子の大学入学金のために公庫から借り入れして融資金が振り込まれた」とか「被告人が否認しているため,一審判決が出るまで4ヶ月以上掛かることが見込まれる」などの「貧困ではないと認めるに足りる特段の事情がない」被疑者・被告人は国選弁護の対象とはなりません。(どのような場合が国選弁護人選任が可能で,どのような場合が不可能なのかについては,法テラスにお問い合わせください。)
したがって,50万円を超える預貯金等を保有している国民の国選弁護人選任権は保障されていないのですが,閣議で決定されたことですから違憲でははありませんし,また,これらの運用が国民同士の経済格差を助長し,「正直者が馬鹿を見る」ことを容認したり,「貧乏人は麦を食え」や「差別社会」を招くということもありません。
○ 法テラスは,預貯金が50万円もない貧乏人を迅速に処罰の対象とするものであり,預貯金が数百万円もある被疑者・被告人の行為や,腕の良い弁護士さんと知り合いである人たちの行為を処罰するものではありません。
したがって,「貧困層を認定すれば迅速に処罰される」ということはありません。ただし,無罪を獲得することを目的として出廷を拒否する弁護士を制裁の対象としていたいわゆる「弁抜き法案」とは,その趣旨や目的,懲戒の対象となる範囲が少し重なり合うかも知れません。この点については,日弁連と法務省が種々協議をして決定したものであり,文句があるのであれば,日弁連に言うのが筋であるかと思われます。
そのほか,総合法律支援については,私Barl-Karthの一連のエントリ,法テラスに関する下記の一部反動弁護士のブログをご覧ください。
また,法テラス開業日の本年10月2日に霞ヶ関周辺で何かが起きるかも知れませんので,当日のマスメディア報道等にご注目ください。