卒論に取り組む高校生のアンケートに答えます。

ある高校生(ミッションスクール)が,このサイトを読んだらしく,私に対して,メールでアンケートを送ってきた。

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私は「裁判員制度に反対の人が多いのはなぜか」ということについて卒論を書いているのですが、一般人の賛成反対の表はあったのですが、弁護士などの専門家についてはそのような表が見当たらず、表を作るためご協力いただけないでしょうか。
1 裁判員制度に賛成か反対またはどちらともいえないか。
2 1の理由はなぜか。
の二つに回答いただけないでしょうか。
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結構勉強熱心な高校生である。どこかの法科大学院生より,よほど勉強熱心なような気もする>N君やOさんのことではない。2人とも結構優秀だ。

このアンケート調査に対しては,以下のとおり回答した。


1 反対

2 憲法上色々な問題があるのだが,一番の理由は「幸福追求権侵害(13条)」である。
国民が裁判員になると殺人事件や放火事件や強盗殺人事件で見たくもない殺人被害者の写真−焼死体(赤鬼さん)・水死体(青鬼さん)−を見なければならないことになる。これは幸福追求権の侵害である。

第二に被告人の憲法で定められた人権の侵害である。

たとえばの話,君はこのような裁判の被告人になることが耐えられるか?

Jesus aber stund vor dem Landpfleger;
さてイエスは総督の前に立っていた。
antwortete er nichts.
何も答えなかった。
Da sprach Pilatus zu ihm:
するとピラトがイエスに言った。
(Pilatus) "Hörest du nicht,
(ピラト)「聞こえないのか?
wie hart sie dich verklagen?"
こんなに激しく彼らはおまえを訴えているのに」
(Pilatus) "Was soll ich denn machen mit Jesu,
(ピラト)「ではイエスはどうすればいいのだ、
von dem gesagt wird, er sei Christus?"
この者はキリストと言われているが?」
Sie sprachen alle:
彼らは皆言った。
(Chor) "Laß ihn kreuzigen!"
(合唱)
「彼は十字架につけろ!」


http://www.damo-net.com/uebersetzung/jsbach/bwv244b.htm
から引用。

それから,「我が命つきるとも」というトーマス・モアの映画も見た方がよい。あと,この本も読んだ方がよい。


http://www.bk1.co.jp/product/2714019?s=bk1ovt06092109



裁判員制度などは,時々新聞に載るが,「国民の理解がなかなか得られず,問題は少なくない。制度の理解のためにいっそうの努力が望まれる」くらいの論調である。
国民の理解が得られないのは当たり前の話で,それは,「国民の無理解・関係部局の努力不足」が原因なのではなく,裁判員制度がとんでもなく悪いものであることが原因なのである。元裁判官大久保太郎氏は,「『「違憲のデパート』裁判員制度実施の不可能性」という論文を書いている。また,東北の弁護士有志が,「裁判員制度廃止を含む抜本的再検討を国に求める決議案」を弁護士会の大会に提出(否決)という事件も起きている。