起訴状における記載例(定型的常套句)

 修習生時代,起訴状における常套句(主に副詞)を研究したことがある。

1 劣情を催し(強姦)
 「にわかに劣情を催し」が定型句である。「やにわに劣情を催し」・「いきなり劣情を催し」というような起訴状はないように思われる。「おもむろに(徐に)劣情を催し」とか「だんだんと劣情を催し」というのもない。
 「陰茎を挿入しようとしたが,○○○○(同人の陰茎が勃起せず・・・・,同人が早漏であるため射精してしまい勃起していた陰茎が萎縮し・・・・,同人の陰茎が大きすぎ・・・・・等々),その目的を遂げなかったものである」と続くことが多い。

2 「手前」(恐喝・脅迫等)
 テメー,てめい,テメエ,テメイ等種々の用例があり,一貫しない嫌いがある。「てめい」が比較的多い。

3 「左側」(道交法違反,業過等)
 起訴状朗読のときに,「サソク」と言う検事と「ヒダリガワ」と言う検事とがいる。どちらでも良いけどね。私の事務所には,依頼者から交通事故の状況を説明してもらうため,ミニカー5台くらいとかお人形さんセットを置いてある。子ども連れの依頼者に好評。

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          ./    // ̄`|i `ヽ,_                  ∧__∧そ
    ____d/____b_/,_L__,||___l_L_                  (`;  )て
   [⊇=.==⊆]-=--- |~゙--=|;-/----]                 (|~゙~゙~゙~|)
   <〓ニ□.ニ〓フi⌒i__|,.______|__i⌒i__/                  く,_,ハ,,_,,ゝ
     ヽゝ_ノ ̄ ヽゝ_ノ ヽゝ_ノ  ,ゝ_ノ                    (,,_,,)_,,)

  ちなみに芥川龍之介侏儒の言葉)は,「サソク」とふりがなが振ってあったような気がする−道徳は便宜の異名である。 「左側通行」と似たものである。−「アクタガワ」と「ヒダリガワ」とは,確かに紛らわしい。

4 こもごも
 集団暴行・脅迫の起訴状でよく見られる言葉である。「こもごも(交々)申し向け」が定型句である。
http://search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%93%E3%82%82%E3%81%94%E3%82%82+%E7%94%B3%E3%81%97%E5%90%91%E3%81%91&ei=UTF-8&pstart=1&fr=slv1-adbe&b=21
「もごもご申し向け」たら暴行・脅迫の構成要件を充足しない(定型説)。修習生(検察実務修習)時代,同僚の修習生を「模擬被害者」にして,他の修習生4−5人が「犯人役」をやってみた。
<てめいこの野郎>
<起案仕上げたのか>
<この馬鹿左翼>
<どう責任とんだ。どうけじめつけるんだ,幾ら出せるんだ,10出せるか,カードあるだろう>
<俺のケツ舐めろ>

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等交々語気鋭く申し向けたら指導教官(大西平泰)に叱られた。

5 「厳選」
 これは,起訴状の定型文句ではなく,「公判前整理手続の必要性(検察官意見書)」でお目にかかる言葉である。「厳選」というと「厳選和牛肉」とか「厳選酒」とか「源泉」とかを連想してしまふのだが,「争点を明確にしたうえ,提出証拠を厳選する必要がある」という文脈でこの言葉を使うことが多い。あんまり厳選しすぎると,証拠開示請求→裁定請求ということになる。(提出予定)検察官手持ち証拠はできるだけ沢山(できれば全部)弁護人に見せてほしい。証拠の厳選は,弁護人側の証拠意見(同意・不同意,異議あり・異議なし)で行うべきなのであって,検察官が証拠をストリクトリーにエレクトerect elect セレクトするのは,「良いとこ取り(証拠隠し)」になる可能性が大きい。このような私見日弁連の見解と帰一する。

6 接客婦
 児福・職安の起訴状で良くお目にかかる言葉。「接客婦」というのは,大抵,いわゆる(18歳未満の)「ヘルス嬢・デリヘル嬢」を意味する。修習生時代「口淫・手淫」という言葉の意味が分からず−どっちがどっちに何をどうするのか分からなかった−女性修習生(現在,法務省の大臣官房秘書課付)に聴いたところ,いきなり殴られた。