裁判官も弁護人もロシアマフィア?

 Aと言う証人の証言態度がさっぱりなので,以下の意見書を提出した。

 証人Aの証言態度に鑑み,下記のとおり,意見を述べる。



第1 証人の証言態度とその原因
 証人の証言態度は,簡単な質問でも1−2分置いて,ようやく「はい。いいえ。忘れた」等と答えたり,終始沈黙したり,理由のないと思料される証言拒否が極めて目立つものである。
 証人が何かを恐れていることは,想像に難くないが,おそらく「日本の法制度に関する誤解」・「ロシアマフィア,日本ヤクザ」等へのおそれが原因ではないかと思われる。

第2 日本の法制度への誤解
 ロシアは旧社会主義国であり,日本の刑法・刑事訴訟制度とかなり異なるところがあると思われる。例えば,捜査関係の供述調書と異なることを法廷で述べると処罰される,という規定がある可能性もある。
 以下の証言は,このような可能性を窺わせるものである。
 そうすると,あなたの記録を見てあなたが知っていると答えたことになっていれば,それはその記録の方が間違いなんですね。
 証言を拒絶します。何かぐちゃぐちゃになっている。脅迫されている感じがします。
 証人は,日本の刑事法にも同様の制度があると誤解しているのかもしれないし,その他,(偽証以外の)自己の証言により,何らかの法的制裁があるものと誤解している可能性もある。

第3 ロシアマフィア・日本ヤクザへの誤解
1 いわゆる「ロシアマフィア」なるものの実体については,当弁護人らも研究中であるが,インターネット等の資料や被告人からの話によれば,日本のヤクザとは似て非なるものであり,要するに,権力の濫用や利権の利用によるあくどい金儲け全般を行う人物・組織(中には政治色を帯びていて,ロシア政府との闇のつながりを持つ組織もいるようである)全般を「ロシアマフィア」と呼ぶようである。
インターネット等によれば,地方の権力者がマフィアであることも少なくない(これは,被告人や被告人の妻も当弁護人らに同様の説明をしている)。また,ロシアマフィアの構成員は10万人以上であり,世界各国に組織がある模様である。
 これらの事情のため,当弁護人らがロシアマフィアの一員やその関係者と誤解して,弁護人らを恐れている可能性が少なくない。
 また,はなはだ失礼なことを申し上げるが,裁判官や検察官をロシアマフィアの一員あるいはその関係者と誤解をしている可能性も絶無とは言えない。

2 上記と同様の理由から,被告人は,「ロシアマフィアの実体」から「日本のヤクザの実体」を誤解し,当弁護人ら(重ねて失礼な指摘となるが,裁判官及び検察官等)が「ヤクザ」またはその関係者と誤解している可能性も指摘できるのである。

3 また,証人の証言がロシアマフィアや日本のヤクザに漏れ,証人やその家族に危害が加えられることを恐れている可能性もある。

第4 裁判所への要望
これらの事情に鑑み,裁判所におかれては,証人が有しているかもしれない上記の懸念が誤解であることを説示し,ありのままを正直に証言するようしかるべき訴訟指揮を執って頂きたく希望する次第である。
 また,証人は,弁護人らの尋問に対しては,証言の拒絶等が目立つ反面,裁判官からの介入尋問に対しては,比較的素直に答える傾向も見て取れる。したがって,適宜,裁判官における介入尋問をして頂けるよう,併せて希望するものである。
以上