裁判員制度:特別休暇取ったのに… 地裁で模擬裁判、拍子抜けの市民も /新潟

Barl-Karth2008-07-31


http://mainichi.jp/area/niigata/news/20080730ddlk15040185000c.html

 来年5月から始まる裁判員制度に向け、法曹三者主催の模擬裁判が29日、新潟地裁で始まった。3日間の日程で、6人の模擬裁判員を選んで審理、評議を行い、判決を下す。同地裁での模擬裁判は7回目。
 初めに、模擬裁判員を選ぶ選任手続きが行われた。地裁が事前に「呼び出し状」を送った50人のうち、8人辞退、7人無断欠席となったため、出席したのは35人だった。全員に共通の質問をする「集団質問」の後、裁判官、弁護士、検察官による個別面接を経て、最終的に6人の裁判員が選ばれた。
 出席したが裁判員に選ばれなかった新潟市西区の団体職員、渡辺陽子さん(24)は「ほっとする半面、少し残念。3日間の特別休暇で参加したが、午前中で終わるなら半日休暇でも良かった」と拍子抜けしたようだった。
 午後から行われた模擬裁判は、架空の殺人未遂事件が扱われ、殺意の有無が争点となった。30日に結審し、31日に評議を経て判決が下される。【岡田英】

(岡田英記者は,何かに付け当事務所に電話してくるので,事務員さんに名前を覚えられている。水俣の件は,こまめにブログに書くことにするから,なるべくブログをみてほしい。)
 これもまた裁判員制度の欠陥の一つなのだろう。
1 「裁判員候補者に選任されたので出頭されたい」旨の呼出状(赤紙)は,現実の呼出期日の約6週間前に送達される。
2 やる気のある(あるいは馬鹿正直な)候補者(勤め人)は,呼出状を受領後速やかに職場の上司に特別休暇付与を申し出ることになろう。(最高裁のHP等を参照にして,3日間休暇申請をするのが普通だろうが,裁判が何日かかるかは,出頭期日に初めてその見込みが伝えられる。それ故,慎重な勤め人は,2週間くらいの休暇申し出をするのがよろしかろう)。
3 裁判員に選任される者は6名(補充裁判員2名)であるのに対し,候補者として呼び出される者は,50人〜100人と言われている。競争率10倍〜20倍で,最近の司法試験より狭き門だ。だから,やる気のある(あるいは馬鹿正直な)落選候補者は,それこそ馬鹿を見ることになる。一旦休暇を取った以上,これを取り消すことは難しいだろう。(候補者の当落は,呼び出された期日の午前中に決まる。)しかも,休暇は,裁判員に選任された場合に備えて得たものなので,選に漏れたからといって,呼出期日の午後から家族旅行に行くわけにもいかないから,パチンコでもして当日の午後とその後の2日間(ないし2週間)を過ごすしかないだろう。パチンコに負けたり,休暇の枠を3日間(ないし2週間)無益に費消するわけだから,踏んだり蹴ったりなのだが,国民の義務だから仕方がないし,国家のためだから,それくらい我慢しなければならない。その程度のことで,司法権への国民の信頼は揺るがない筈だ。何と言っても,国民は統治の主体だから喜んで犠牲を払うべきなのだ。



4 それじゃぁ,事前に休暇を申し出なかった非国民的ジコチュー候補者(ただし,呼出期日に会わせて半日だけ休暇を取っている)は,どうだろうか? 急遽休暇を申し出るわけにもいかないし,無断欠勤するわけにもいかない。裁判長も「事前に休暇を取っていないので裁判員になれません」と訴える候補者を無理矢理選任することもないだろう。

 結局裁判員に選任されるのは,時間が有り余っている人(いわゆるニート年金生活者)よほど奇特な人やいわゆるプロ市民等に限られるだろう。これでは,裁判員の人選は結局偏ってしまうことになるだろう。そんな人たちに裁かれる被告人の気持ちは,誠にやるせないものではなかろうか(2ちゃん 朝生板をみたら「愚民」とか「やるせなさ」発言が受けていた)。
 結局,裁判員制度は,被告人にとっても非国民にとっても裁判員候補者・候補者が勤務する会社にとってもやるせない制度というのが,結論である。