弁論の併合について

第313条〔弁論の分離・併合・再開〕
裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。
「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂
 弁論の併合に関する刑事訴訟法(以下「刑訴法」)の規定は,上記の1箇条のみである。併合の要件は,「適当と認めるとき」とされており,裁判所の自由裁量が認められているが,一人の被告人が複数の公訴事実で公判請求(1通の起訴状で複数の公判請求される場合もあるし,捜査の進展に応じ別個の起訴状で追起訴されることもある)された場合,弁論の併合決定により,併合審理されるのが通例である(1通の起訴状による場合は検察官から「以上の各公訴事実について併合審理されたい」旨の黙示的請求があり,その請求に対して黙示的併合決定があったと認めるというのが実務上の扱いのようである。これに対して,起訴状が複数の場合は,明示的な併合請求・併合決定があるのが通例)。
 上記した実務上の運用は,併合罪処理による被告人の利益確保,法曹三者工数の節約,紙資源の節約等の実質的利益に支えられたものである。平野博士も「併合罪の場合には,別々に審判されると被告人に不利益であるから可能な限り併合するようにしなければならない」と説いている。