結論 disperato!
偉い刑法・刑訴法学者が「disperato!」と述べたが,本当にそのとおりだ。
従来の弁護人の仕事より難しくなるのか?
格段に難しい。色々な縛りが出てくるから。「争点明示義務」があるといわれているが,被告人が接見のたびに言い分をころころ変えたら,争点明示など出来るわけがない。従来の刑事手続では,争点をぼかしながら,公判ごとに争点を提示していくというやり方がある程度許されていたから,格段にやり難い。「後出し証拠禁止」も弁護人の手足を縛る。
公判では「オーラルバトル能力」「オーラルコミュニケーション能力」が求められる。しかし,そういう戦闘能力がある弁護士がどれくらいいいるかというと,実は少ない。これらの戦闘のためには高度の学力が必要だ。変な言い方だが「学力が筋肉化」してないと使い物にならない。分かるだろうか?
たとえば「伝聞法則」を完全に理解し条文が頭の中に入っていないと,法廷における戦闘に勝てない。そういう点から見ると,最近の若手法律家の学力低下は,遺憾である-伝聞の基礎的考察が全然出来ていない-。
被告人の利益
裁判員裁判が実施されると従来の裁判より「有罪・無罪」「量刑」でブレが出てくる。だから,弁護人の力量によって,この点が左右されることが多くなる。
じゃぁ,腕の良い刑事弁護人を依頼できるかというと,はっきり言って,貧困層には無理だ。
私は,整理手続を経る事件,無罪を真剣に争う事件(これまでの成果は完全無罪1件・弁護人5名着手金報酬合計1000万円程度,一部無罪−輸入罪から所持罪へ認定落ち−1件 弁護人3名 高裁で2名,着手金報酬合計数百万円),嫌疑不十分で落とす事件(捜査段階の弁護人3名・通訳人2名・手数料通訳人込み120万円,ぎりぎりで執行猶予をねらう事件など場数を踏んでいるが,複数の弁護人を選任し,100万円以上の着手金を頂いている事件が年に数件ある。これくらいもらわないと,事務所経営を維持できない。
裁判員裁判が実施されると,現在の傾向はより助長されるだろう。「有能な代打」を雇うには金がかかる。裁判員裁判は,賭場みたいなもので,成果を得るためには「有能な代打」が必要なわけだ。貧乏人は博打をしても勝てない。要するに「判決を金で買う」みたいな話になるかも知れない。なんか寒いね。